Vol.67 No.1 January 2019
総説
海外における薬剤耐性と抗菌薬使用の現状
1)国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター*
2)同 国際感染症センター
要旨
国際的な薬剤耐性対策を考えるうえで,また国内対応を考えるうえで,海外の薬剤耐性や抗菌薬使用の現状を知ることは重要である。薬剤耐性については検査体制の整備と合わせて国際的なサーベイランス体制の整備途上である。各国のサーベイランス結果をまとめたデータでは,とくに腸内細菌科細菌の耐性において国や地域間の差が際立っていた。アジア地域は耐性の割合が高い国が多く,輸入例の対応など注意を払う必要がある。抗菌薬販売量にもとづいた抗菌薬消費量の国際比較では,高所得国では横ばいであったものの,より低い所得の国では高所得国の水準に向かって増加傾向であった。抗菌薬消費量の増加のみが薬剤耐性増加の原因というわけではないが,他の要因と相まって関連している可能性がある。データの限界や各国,地域の特性を理解しながら薬剤耐性や抗菌薬使用をより正確に把握していくことが求められる。
Key word
antimicrobial resistance, antimicrobial agent, surveillance
別刷請求先
*東京都新宿区戸山1-21-1
受付日
2018年5月14日
受理日
2018年7月9日
日化療会誌 67 (1): 13-22, 2019