Vol.67 No.1 January 2019
総説
抗微生物薬の適正使用
1)東京都立小児総合医療センター感染症科*
2)同 薬剤科
3)同 検査科
4)新潟大学小児科
要旨
薬剤耐性対策の医療施設での介入として,Antimicrobial Stewardship Program(ASP)がある。東京都立小児総合医療センターでは,独立したASP小委員会を設立し,組織的なASP介入を行っている。薬剤データをDays of Therapy(DOT)/1,000 patient-daysで把握し,適正使用として介入すべき領域の調査を行った。ASPの成果としてプロセス指標,アウトカム指標を抽出し,評価,解析,計画立案ができる体制とした。抗菌薬の届出制に処方後監査を追加し,処方量が減ったところで処方許可制と処方後監査を導入し,広域抗菌薬,内服のセフェム系抗菌薬,マクロライド系抗菌薬,キノロン系抗菌薬の削減に成功した。また,感染症関連死亡率も減少しており,安全に介入することができた。検査科では,微生物検査の適正化,抗菌薬の感受性の制限報告,核酸増幅検査の導入を行った。薬剤科では,採用薬剤への介入,投与方法や投与量の国際的な基準に基づくマニュアル整備,Therapeutic Drug Monitoringの導入を行った。地域への介入では,一般および医療者に講演会,リーフレット配布,ポスター掲示,ホームページなどを通じて啓発活動を行っている。ASPの活動は,病院の委員会に毎月,DOTなどの客観的データで報告をし,公式な記録として病院内に周知をしている。ASPの活動は,障壁となる抵抗者に遭遇することもあるが,新しいことの導入時期にはよくあることである。薬剤耐性対策のためのASPは,浸透していけば必ず大多数から理解は得られる。お互いの信頼関係を構築すること,対立関係になることを極力避けること,個人ではなく病院のシステムとして実施すること,感染症にかかわる者として薬剤耐性対策にコミットすることが重要である。
Key word
antibiotic, antimicrobial stewardship program, antimicrobial resistance, pre-authorization, prospective audit and feedback
別刷請求先
*東京都府中市武蔵台2-8-29
受付日
2018年5月21日
受理日
2018年7月11日
日化療会誌 67 (1): 23-28, 2019