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書誌情報

Vol.67 No.1 January 2019

原著・臨床

小児を対象とした膜型人工肺,持続血液濾過透析併用下におけるvancomycinの薬物動態解析

諏訪 淳一1), 櫻井 理乃1), 堀越 裕歩2), 石原 溶子1)

1)東京都立小児総合医療センター薬剤科
2)同 感染症科

要旨

 【背景】小児における体外循環施行下での抗菌薬の薬物動態は循環血液量に対するプライミングボリュームの比率が大きく,分布容積(Vd)の増加が顕著とされる。しかし,小児を対象とした体外循環施行下での薬物動態の検討は非常に少ない。小児のvancomycin(VCM)を対象に膜型人工肺(ECMO),持続血液濾過透析(CHDF)併用下での薬物動態を検討した。
 【方法】2013年1月から2017年3月の期間,東京都立小児総合医療センターで,ECMO,CHDF併用下でVCMが投与され,投与後に血中濃度が2点測定された15歳以下の症例を対象とした。Sawchuk-Zaske(SZ)法によりVdおよび消失速度定数(ke),バンコマイシンクリアランス(CLVCM)を算出した。
 【結果】対象症例9例(男児5例,女児4例)の年齢は中央値3.6[四分位範囲(IQR)0.2~8.0]歳,体重は中央値12.9(IQR 3.0~22.5)kgであった。SZ法より算出されたVdは中央値0.7(IQR 0.5~1.0)L/kg,keは中央値0.06(IQR 0.04~0.2)hr-1であった。CLVCMは中央値0.06(IQR 0.04~0.2)L/hr/kgであり,血中濃度時間曲線下面積=400 μg・hr/mLに必要な投与量は中央値23.6(IQR 14.6~63.0)mg/kg/dayであった。
 【考察】Vdが増加した症例があり,1回投与量の増量を考慮し,残存腎機能とCHDFの設定から投与間隔を調整することが体外循環施行時の投与設計では有用であると考えられた。

Key word

pediatric, extracorporeal membrane oxygenation, continuous venovenous hemodiafiltration, vancomycin

別刷請求先

東京都府中市武蔵台2-8-29

受付日

2018年4月9日

受理日

2018年8月22日

日化療会誌 67 (1): 38-43, 2019