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書誌情報

Vol.67 No.2 March 2019

総説

ダプトマイシンの治療薬物モニタリング(TDM)の必要性

尾上 知佳1), 辻 泰弘1), 山本 善裕2)

1)富山大学大学院医学薬学研究部(薬学)医療薬学研究室
2)富山大学感染予防医学講座/感染症科

要旨

 ダプトマイシン(DAP)は,多剤耐性菌を含む幅広いグラム陽性菌に対して抗菌活性を示す環状リポペプチド系抗菌薬である。現在,DAPの治療薬物モニタリング(TDM)の実施は必要ないとされており,皮膚・軟部組織感染に対しては1回4 mg/kgが,敗血症および右心系感染性心内膜炎に対しては1回6 mg/kgが24時間ごと(腎機能低下患者は48時間ごと)に,静脈内投与されている。In vivo研究において,DAPの有効性は,血中濃度―時間曲線下面積(AUC)/最小発育阻止濃度(MIC)と強く相関することが報告されたことから,DAPの有効性は薬物血中濃度依存的であると考えられている。一方で,臨床研究においては,1回4 mg/kgおよび1回6 mg/kgの投与では,AUC/MICと治療効果および微生物学的有効性との相関は認められていない。DAPの代表的な副作用として,クレアチンホスホキナーゼ(CPK)値の上昇が挙げられる。特に,最小血中濃度が24.3 mg/L以上の場合,CPK値上昇のリスクが高まることが知られている。一方で,高用量投与における安全性および忍容性も報告されており,CPK値の上昇と用量および薬物血中濃度との相関には,議論の余地がある。DAPの薬物血中濃度は,患者ごとにバラツキが大きく,その変動要因としては,腎機能,血液透析,アルブミン濃度および体温等が挙げられる。また,血液(血清)中のDAPは,温度によりその安定性が変動するため,検体の保存環境および取り扱いにより測定誤差が大きくなる可能性があることに注意が必要である。DAPの有効性・副作用発現と薬物血中濃度との相関を結論づけるには,現段階ではエビデンスが不十分であり,DAPのTDMの実施を積極的に推奨することは困難である。DAPのTDMの必要性は,今後,さらなるデータを集積し,慎重に検討すべきである。

Key word

daptomycin, therapeutic drug monitoring, pharmacokinetics, pharmacodynamics

別刷請求先

富山県富山市杉谷2630番地

受付日

2018年6月11日

受理日

2018年9月4日

日化療会誌 67 (2): 149-154, 2019