Vol.67 No.3 May 2019
原著・臨床
下顎埋伏智歯抜歯手術における術後感染予防抗菌薬に関する後方視的検討
防衛医科大学校病院歯科口腔外科*
要旨
下顎埋伏智歯抜歯手術は歯科口腔外科領域で頻度が高い手術である。その一方で,本邦では下顎埋伏智歯抜歯手術における予防抗菌薬投与期間について検討された報告は,きわめて少ない。そのため,当科での下顎埋伏智歯抜歯手術について,主に予防抗菌薬投与期間が手術部位感染(SSI)に与える影響を後方視的に評価した。対象症例は364例であり,アモキシシリン(AMPC)が358例,アジスロマイシン(AZM)が6例であった。SSI発症率に関しては全体として2.7%(10/364)であり,予防抗菌薬投与方法別のSSI発症率はAMPC 250 mg術前単回投与群9.5%(4/42)に対して,AMPC 750 mg術後1日投与群2.0%(6/305)と有意差を認めた(p=0.023)。AMPC 1,000 mg術後1日投与群(0/1)とAMPC 750 mg術後2日投与群(0/10)およびAZM 2 g術前投与群(0/6)では,SSIは認めなかった。年齢,性別,下顎智歯の埋伏位置および骨削除の有無において,SSIを認めた群とSSIを認めなかった群間で有意差は認められなかった。下顎埋伏智歯抜歯手術における予防抗菌薬として,AMPC術後24時間投与の妥当性が示唆された。
Key word
antimicrobial prophylaxis, mandibular third molar, surgical removal
別刷請求先
*埼玉県所沢市並木3-2
受付日
2018年9月10日
受理日
2018年12月25日
日化療会誌 67 (3): 385-391, 2019