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書誌情報

Vol.67 No.5 September 2019

総説

ボリコナゾールを自施設で測定する有用性

花井 雄貴1, 2), 松尾 和廣2), 植草 秀介2), 小杉 隆祥3), 吉尾 隆2), 西澤 健司1)

1)東邦大学医療センター大森病院薬剤部
2)東邦大学薬学部臨床薬学研究室
3)防衛医科大学校病院薬剤部

要旨

 ボリコナゾール(VRCZ)は,他のアゾール系抗真菌薬と比べて血中濃度の個体間変動が大きいことが認められている。その理由として,非線形性の薬物動態を示し,またCYP2C19による遺伝多型も血中濃度へ影響を及ぼすと考えられている。さらに,血中濃度の上昇に伴い肝障害や視覚障害などの有害反応が増加することから,適正使用のために治療薬物モニタリング(TDM)を実施することが推奨されている。
 VRCZの血中濃度測定法には,バイオアッセイ法,高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法および高速液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)法等の報告がある。いずれも有用な測定法であるが,東邦大学医療センター大森病院では,測定精度および感度が良好で,簡便かつ迅速に分析可能なHPLC-UV法を採用としている。必要な検体量はわずか血漿200 μL,分析時間は約15分のため,日常診療にてVRCZのTDMを実施するための手法として十分に運用可能である。
 実際に,当院では2009年からVRCZの血中濃度測定を開始しているが,近年ではTDMの必要性が認知されたことで臨床医からの測定依頼件数は増加傾向を示している。その要因として,VRCZは血中濃度への影響因子が多いが,血中濃度を測定することで個々に合わせた投与量調節が行える点,投与開始早期からの迅速な血中濃度測定が安全性および有効性向上に資する点などが挙げられる。したがって,外注検査による血中濃度測定では迅速性や費用の点で臨床上の対応が難しいことから,自施設における血中濃度測定が果たす役割は決して小さくない。人材確保や環境整備などの充実は必須であるものの,VRCZ治療の最適化を目指し,真菌感染症領域におけるさらなる治療成績の向上,耐性菌出現の抑制,医療費削減を図るために,日頃より実践している薬物血中濃度測定の体制を見直す機会となれば幸いである。
 本稿では,VRCZのTDMを実施する意義や血中濃度の測定法,ならびに自施設で血中濃度測定を行う有用性について概説したい。

Key word

voriconazole, therapeutic drug monitoring, high-performance liquid chromatography, antifungal stewardship

別刷請求先

東京都大田区大森西6-11-1

受付日

2018年9月20日

受理日

2019年3月7日

日化療会誌 67 (5): 556-566, 2019