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書誌情報

Vol.67 No.5 September 2019

総説

AMR対策アクションプラン時代の感染症診療・対策―わが国におけるCA-MRSAの疫学情報と臨床像―

山口 哲央

東邦大学医学部微生物・感染症学講座

要旨

 MRSAは医療関連施設で最も問題になる耐性菌の一つであるが,感染対策の普及により2000年代以降はさまざまな国がMRSAの検出率を下げることに成功している。しかし,1990年代後半より,健常人に感染症を引き起こす市中感染型MRSA(CA-MRSA)や,家畜を介して感染する家畜関連MRSA(LA-MRSA)が世界各地で広がりをみせ,MRSA感染症は新たな局面を迎えつつある。わが国はMRSA蔓延国として知られており,黄色ブドウ球菌におけるメチシリン耐性率は現在約5割程度で推移している。2016年4月には世界的な多剤耐性菌への懸念の高まりを受けわが国においても薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが決定されたが,その中で黄色ブドウ球菌におけるメチシリン耐性率を2014年の49%から2020年には20%以下に引き下げるという成果指標が定められた。わが国では元々MRSAの検出率が高く,加えてCA-MRSAの検出も増えてきている。その中で,メチシリン耐性率を年率5%ずつ下げるためには,これまでの対策のみでは不十分であり,何らかの新しい仕組み,取り組みが必要である。MRSAは多剤耐性菌であるうえに病原性が高く,保菌させないことが重要な病原体である。接触予防策を徹底することで伝播は予防できるはずであり,より良い感染対策を今後も検討し続けるべきである。

Key word

national action plan on antimicrobial resistance, MRSA, infection control

別刷請求先

東京都大田区大森西5-21-16

受付日

2018年10月10日

受理日

2019年3月8日

日化療会誌 67 (5): 567-576, 2019