Vol.68 No.2 March 2020
総説
小児における深在性真菌感染症~深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014 小児領域(追補版)に即して~
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生涯免疫難病学講座*
要旨
小児においては成長に伴う免疫能が未熟であることに加え,原疾患に対する積極的な免疫治療が進歩したことで,深在性真菌症の発症リスクが以前より増加していることが認識されている。小児での深在性真菌症の診断は困難であるが,真菌血症,髄膜炎,呼吸器感染症(肺炎,肺膿瘍,間質性肺炎など),消化管感染症などが報告されている。原因不明または抗菌薬に不応性発熱の存在に加え,患児の原疾患(染色体異常,免疫不全症,悪性疾患など),家族歴(易感染性),リスクファクターの聴取・検出(中心静脈カテーテル挿入症例,ステロイド薬・免疫抑制薬使用症例,人工呼吸器装着症例)など問診を含めた十分な経過観察を要する。
近年になり,本邦において小児で適応が認可されている抗真菌薬は,これまでのミカファンギン,リポソーマルアムホテリシンB,フルコナゾールの3剤に加え,ボリコナゾール,カスポファンギンを含めた5剤になり,治療の幅が大きく広がった。感受性や忍容性に鑑みて,小児において適応外使用となる薬剤も駆使して治療にあたる必要がある。小児科領域での抗真菌薬の投与は,その有効性を考え,副作用のモニタリングを確実に行う必要がある。なお,深在性真菌症はさまざまな宿主側の免疫低下などを背景にもつ場合が多く,それらに対する十分な補助療法の併用も効果を得るためには重要である。
以上の現状に鑑み,2014年2月『深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014』の改訂,さらに2015年9月には小児領域に対する新規適応取得薬剤の追加により追補版を作成した。ガイドライン追補版では,小児領域の記述を「免疫不全症」,「小児血液・腫瘍性疾患」,「新生児」に重点をおいて記載してあり,各分野における「深在性真菌症」の背景,リスクファクター,診断,治療について詳細に解説してある。
Key word
deep-seated mycoses, Japanese guideline, child
別刷請求先
*東京都文京区湯島1-5-45
受付日
2018年10月16日
受理日
2019年11月6日
日化療会誌 68 (2): 216-222, 2020