Vol.68 No.6 November 2020
症例報告
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死に起因した壊死性軟部組織感染症の1例
1)琉球大学病院歯科口腔外科*
2)琉球大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能再建学講座
3)琉球大学病院感染対策室
要旨
患者は75歳の女性で左側頬部の腫脹を主訴に近歯科より当科紹介受診となった。既往歴に糖尿病,高血圧,骨粗鬆症と複数認め,多数の内服薬を服用し,骨粗鬆症治療のためにビスフォスフォネート製剤も内服していた。採血所見にて著明な炎症所見の亢進を認めた。入院加療による消炎が必要と判断し,消炎目的に当科入院となった。当科では,抗菌薬の併用と3回の切開排膿術を局所麻酔下にて施行した。消炎後に全身麻酔下にて壊死組織の除去と腐骨除去を施行した。術後10カ月が経過し,経過良好であった。今回われわれは,骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ:anti-resorptive agents-related osteonecrosis of the jaw)に起因した壊死性軟部組織感染症の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した。
Key word
necrotizing soft-tissue infection, temporal fossa, gas gangrene, necrotizing fasciitis, bisphosphonate-associated osteonecrosis of the jaw
別刷請求先
*沖縄県中頭郡西原町字上原207番地
受付日
2019年11月18日
受理日
2020年9月3日
日化療会誌 68 (6): 619-626, 2020