Vol.69 No.3 May 2021
原著・臨床
慢性呼吸器病変の二次感染,誤嚥性肺炎および肺膿瘍患者におけるlascufloxacin注射剤の一般臨床試験
1)日本赤十字社仙台赤十字病院呼吸器内科*
2)厚生会奈良厚生会病院
(旧 奈良県立医科大学感染症センター)
3)長崎市立病院機構長崎みなとメディカルセンター
(旧 大分大学医学部附属病院)
4)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻呼吸器内科学分野
5)琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学
6)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・診断学分野
7)東邦大学医学部微生物・感染症学講座
8)大坪会北多摩病院
9)杏林製薬株式会社臨床開発センター
10)長崎大学
要旨
新規のレスピラトリーキノロンであるlascufloxacin(LSFX)注射剤における慢性呼吸器病変の二次感染,誤嚥性肺炎および肺膿瘍患者に対する有効性および安全性を検討することを目的として,第III相多施設共同非盲検非対照試験を実施した。用法・用量および投与期間は,1日1回LSFX 150 mg(負荷投与として初日は300 mg)を,7~14日間点滴静脈内投与とした。
臨床効果:慢性呼吸器病変の二次感染では,主要評価項目である投与終了・中止7日後の治癒率は93.3%(42/45例),副次評価項目である投与3日後および投与終了・中止時の有効率はそれぞれ87.0%(40/46例),97.8%(45/46例)であった。誤嚥性肺炎および肺膿瘍では,主要評価項目である投与終了・中止時の有効率はそれぞれ100%(12/12例),90.9%(10/11例),副次評価項目である投与3日後の有効率は,それぞれ92.3%(12/13例),81.8%(9/11例)であった。
微生物学的効果:被験者別の菌消失率は,慢性呼吸器病変の二次感染が95.2%(20/21例),誤嚥性肺炎が91.7%(11/12例),肺膿瘍が90.9%(10/11例)であった。
安全性:有害事象の発現率は64.1%(50/78例),副作用の発現率は33.3%(26/78例)であった。本試験では死亡例はなく,重篤な副作用として肺障害が1例にのみ認められたが,投薬等の処置により回復した。
以上の結果より,LSFX 150 mg(初日300 mg)1日1回点滴静脈内投与は慢性呼吸器病変の二次感染,誤嚥性肺炎および肺膿瘍に対しても優れた有効性が期待でき,安全性にも大きな問題はないものと考えられた。
Key word
lascufloxacin, secondary infection, chronic respiratory disease, aspiration pneumonia, lung abscess
別刷請求先
*宮城県仙台市太白区八木山本町2―43―3
受付日
2020年10月5日
受理日
2021年1月12日
日化療会誌 69 (3): 270-285, 2021