Vol.70 No.1 January 2022
原著・臨床
SARS-CoV-2ワクチン接種後の副反応発現率とIgG抗体価解析
1)枚方公済病院薬剤科*
2)同 感染対策室
3)同 検査科
4)同 呼吸器内科
5)同 内分泌代謝科
要旨
Coronavirus disease 2019(COVID-19)を引き起こすsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2)は2020年の初めより世界的な広がりをみせ,2021年現在でも社会に劇的な影響を及ぼしている。2021年2月に国内初となるSARS-CoV-2に対するmRNAワクチンであるトジナメランが特例承認され,2021年10月にはワクチン接種率は国内人口の6割にまで上昇している。本研究では,ワクチンの先行接種を受けた国家公務員共済組合連合会枚方公済病院(以下,当院)の職員を対象に,副反応の調査とIgG抗体価の測定を行うことで有効性と安全性を評価した。
2021年4月9日までにトジナメラン(コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン)を2回接種した当院の職員433名を対象に,アンケートによる副反応の調査とSARS-CoV-2 IgG II Quant(Abbott)を用いたIgG抗体定量測定を行った。2回目ワクチン接種後では初回と比較して,倦怠感,頭痛,関節痛,寒気,37.5℃以上の発熱の発現率が有意に増加した(p<0.001)。また,それらの発現率は若年であるほど有意に高かった(p<0.05)。中でも発熱の発現率は40.3%(初回接種後の12.6倍)となり,20代では54.0%(60歳以上の4.3倍)となった。解熱鎮痛薬を服用した割合は59.7%(初回接種後の4.1倍)で,副反応による諸症状により欠勤となった割合は25.2%(初回接種後の6.3倍)となった。抗体価はすべての研究対象者で陽性となり,若年であるほど有意に高値となった(p<0.005)。また,30歳以上では男性と比較して女性で有意に高値となった(p<0.01)。ワクチン一般接種の開始に伴い,接種対象者が若年化することで日常生活への副反応の影響は顕在化すると考えられる。事前に発現率を把握し,準備しておくことが重要である。
Key word
SARS-CoV-2, mRNA vaccine, side effect, antibody titer
別刷請求先
*大阪府枚方市藤阪東町1丁目2番1号
受付日
2021年8月2日
受理日
2021年11月12日
日化療会誌 70 (1): 73-79, 2022