Vol.70 No.1 January 2022
症例報告
投与間隔の延長によりcolistin投与後の無呼吸発作が消失した1例
1)東京女子医科大学病院薬剤部*
2)同 感染症科
要旨
症例は86歳女性。多剤耐性緑膿菌による複雑性腎盂腎炎に対し,colistin(CL)1回66 mg(1.5 mg/kg)を36時間ごと,aztreonam 1回2 gを12時間ごとの投与を行ったところ治療開始3日目に複数回の無呼吸発作がみられた。CLによる神経毒性を疑ったが,感受性が確認できている他の治療選択肢がないため投与間隔を48時間に延長し投与を継続した。治療開始5日目から無呼吸は認めず,治療開始4,6,11日目の尿培養で陰性化を確認したため,13日目で投与終了とした。
CLによる神経毒性は,用量依存性であるといわれている。現在の承認用量が過去に使用されていたよりも少なく設定されていることや,腎不全による調整がされるようになったことから,近年ではほとんど報告はない。本症例では,添付文書用量に基づいた十分な減量を行い,投与開始後の急性腎障害も認めなかったにもかかわらず無呼吸発作が出現した。これに対し,CL投与間隔を延長し投与することで無呼吸を改善し,臨床および細菌学的効果をもたらした。
Key word
colistin, multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa, apnea
別刷請求先
*東京都新宿区河田町8-1
受付日
2021年8月4日
受理日
2021年10月15日
日化療会誌 70 (1): 88-93, 2022