Vol.70 No.2 March 2022
総説
わが国における伴侶動物由来薬剤耐性菌の現状
1)北海道大学大学院獣医学研究院・獣医学部獣医衛生学教室*
2)同 国際感染症学院
3)酪農学園大学名誉教授
要旨
イヌやネコなどの伴侶動物はヒトと密接に接する動物であり,わが国においても戦後の第一次ペットブーム以降,われわれの生活の中に深くかかわっている存在である。ヒト医療同様に,獣医療でも各種細菌性感染症の治療に抗菌薬は使用されており,特に伴侶動物医療においては人体用のセファロスポリン系やフルオロキノロン系といった抗菌薬が汎用されている。したがって,伴侶動物医療からも基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生やフルオロキノロン系抗菌薬に耐性を示す腸内細菌科細菌やメチシリン耐性Staphylococcus属菌の報告がなされている。2016年に制定された「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016-2020)」では,ヒトの医療だけではなく獣医療や環境といったOne Healthの視点に立ち,協働して集中的にAMR対策が取り組まれている。そこで,本稿ではわが国における伴侶動物由来薬剤耐性菌の現状について紹介し,今後のAMR対策にどのように伴侶動物医療または伴侶動物由来薬剤耐性菌対策が関与していくべきかを考えていきたい。
Key word
antimicrobial resistance, companion animal, Enterobacteriaceae, Staphylococcus, Enterococcus
別刷請求先
*北海道札幌市北区北18条西9丁目
受付日
2021年11月1日
受理日
2021年11月25日
日化療会誌 70 (2): 189-199, 2022