Vol.70 No.2 March 2022
原著・臨床
Clostridioides difficile感染症におけるmetronidazoleの有効性の検証
1)東京慈恵会医科大学附属柏病院薬剤部*
2)同 中央検査部
3)同 感染対策室
4)東京慈恵会医科大学感染制御科
5)同 臨床検査医学講座
要旨
本邦のClostridioides difficile感染症(CDI)診療ガイドラインでは,初発の非重症例への第一選択薬としてmetronidazole(MNZ)が推奨されており,諸外国のガイドラインとは異なる特徴の一つである。本研究では,初発のCDIにおけるMNZの有効性を明らかにすることを目的とし,非重症例,重症例におけるMNZとvancomycin(VCM)の有効率について後方視的に検討した。対象は東京慈恵会医科大学附属柏病院でCDIと診断された20歳以上の症例とし,調査期間の2018年4月~2021年3月の3年間で115例が対象となった。115例中57例(49.6%)がMNZ,58例(50.4%)がVCMを投与され,有効率はMNZ投与群91.2%,VCM投与群93.1%と有意な差は認めなかった(P=0.47)。また,非重症例81例のうち45例がMNZ,36例がVCMを投与され,重症例34例のうち12例がMNZ,22例がVCMを投与された。有効率は,非重症例ではMNZ投与群で88.9%,VCM投与群で97.2%と有意差は認めず(P=0.52),重症例でもMNZ投与群で100%,VCM投与群で86.4%と有意差は認められなかった(P=0.62)。一方,治療終了8週間以内に再発した症例は106例中13例(12.2%)で,MNZ投与群7.7%,VCM投与群16.7%と有意な差は認めず(P=0.24),非重症例の再発率はMNZ投与群で10.0%,VCM投与群17.1%,重症例はMNZ投与群で0%,VCM投与群で15.8%であり,非重症例,重症例ともに治療薬による有意な差を認めなかった(P=0.50,P=0.28)。本研究では非重症例,重症例のいずれに対してもMNZが有効である可能性が示され,本邦におけるCDIに対する治療方法について,さらなる研究が必要であると考えられた。
Key word
Clostridioides difficile, metronidazole, vancomycin, efficacy, relapse
別刷請求先
*千葉県柏市柏下163番地1
受付日
2021年10月29日
受理日
2021年12月16日
日化療会誌 70 (2): 210-216, 2022