Vol.70 No.6 November 2022

短報

高齢者施設で発生したCOVID-19クラスター24人への往診による中和抗体sotrovimab投与

杉原　誠人^1）, 宮前　みどり^2）, 今井　陽平^3）, 小泉　浩一^4）

^1）東京都立病院機構東京都立多摩北部医療センターリウマチ膠原病科^＊
2）同　看護部
^3）同　内科
^4）同　副院長

要旨

　2022年1月SARS-CoV-2オミクロン株（BA. 1系統）の急激な感染拡大により，東京都内で高齢者施設等での新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のクラスターが多発した。高齢者施設等には重症化リスクの高い高齢者が入所しているが，介護度が高く，認知症・徘徊などもあることから全例の入院治療は困難なことが多い。われわれは施設クラスターに対応し，医師・看護師を派遣し往診での感染対策指導を行ったうえでCOVID-19患者24人に中和抗体sotrovimabを投与した。このうち2人は脱水などで入院となったが，残る患者は施設内で療養を完遂できた。また，施設内での他フロアへの感染拡大もみられず，最終的にクラスターは収束した。往診による感染対策指導と中和抗体等での治療介入は，施設内の感染拡大防止，病院の医療リソースの保全，患者の生活環境維持などの利点があり，施設クラスター対策として有用であると考える。

Key word

COVID-19, long-term care facility, neutralizing antibody, sotrovimab

別刷請求先

^＊東京都東村山市青葉町1-7-1

受付日

2022年3月23日

受理日

2022年7月21日

日化療会誌 70 (6): 453-459, 2022