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書誌情報

Vol.71 No.2 March 2023

原著・臨床

周術期抗菌薬の適正使用に向けた取り組みとアウトカム評価

渡部 亨平1, 2), 稲垣 孝行1, 3), 今 俊介1), 髙野 雅己1), 松原 匡希1), 森岡 悠4), 八木 哲也4), 山田 清文1)

1)名古屋大学医学部附属病院薬剤部
2)日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院薬剤部
3)名城大学薬学部実践薬学1
4)名古屋大学医学部附属病院中央感染制御部

要旨

 周術期予防抗菌薬の適正化に向け,名古屋大学医学部附属病院(以下,当院)では「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」(以下,実践GL)を用い,Antimicrobial Stewardship Team(以下,AST)が介入を行っている。なお,脳神経外科領域と眼科領域に関しては,ドラフト版実践GLを用いた。本研究では2014年8月1日~2014年8月31日(AST介入前),2016年8月1日~2016年8月31日(AST介入1年後),2018年8月1日~2018年8月31日(AST介入3年後)の間に,当院にて手術を施行した症例において,周術期に使用した抗菌薬を調査した。さらに実践GL推奨の予防抗菌薬が使用されている症例について,予防抗菌薬の投与量,術前投与のタイミング,術中再投与間隔,術後の投与期間を調査し,実践GLとの適合率を調査した。推奨抗菌薬を使用している症例の割合は,2014年は60.8%,2016年は73.8%,2018年は89.8%であった。推奨抗菌薬使用例のうち予防抗菌薬の投与量の適合率は,それぞれ2014年が61.3%,2016年が63.0%,2018年が91.1%,術前投与のタイミングの適合率は,2014年が92.1%,2016年が92.1%,2018年が93.1%,術中再投与間隔の適合率は,2014年が82.5%,2016年が83.0%,2018年が85.1%であった。術後の予防抗菌薬の投与期間については,2014年が37.4%,2016年が40.0%,2018年が82.9%で,いずれの項目においても実践GLへの適合率は向上していた。2018年と2014年を比較して年間薬剤費節減額は,推定約742万円であった。ASTの継続的なモニタリングの実施による新規の問題点の抽出と介入により,周術期予防抗菌薬の,薬剤選択,投与量,術後投与期間を改善し,医療経済的にも良好な効果が得られた。

Key word

SSI, perioperative administration, antimicrobial prophylaxis, appropriate use, guideline

別刷請求先

愛知県名古屋市天白区八事山150

受付日

2022年6月24日

受理日

2022年11月15日

日化療会誌 71 (2): 123-132, 2023