Vol.71 No.3 May 2023
短報
2010年および2016年当時における全国を対象とした医療機関による薬剤耐性対策の実態調査
1)京都薬科大学臨床薬剤疫学分野*
2)国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンター
要旨
薬剤耐性(AMR)による脅威が広がるなか,日本では院内感染対策を重視した診療報酬や感染症に関連する医療チームの新設など,感染症を取り巻く環境が大きく変遷してきたが,当時の実態は明らかでない。そこで,抗菌薬使用動向システムに登録された質問への回答情報を集計し,2010年の感染防止対策加算制定時および2016年のAMR対策アクションプラン策定時における,AMR対策の実態を調査した。条件に合致する施設は2010年は70施設,2016年は93施設であった。このうち感染防止対策加算の算定施設は,2010年(38.6%,27/70件)から2016年(95.7%,89/93件)に大幅に増加し,感染防止に努める動きが活発になったことが推察された。また,感染防止対策加算の算定施設では,認定・専門薬剤師の在籍率が高く,より抗菌薬適正使用支援(AS)活動に関与しており,施設間で格差が生じていることが考えられた。今後,各医療機関に対して認定・専門薬剤師を配置する環境を整備したうえで,AS活動を継続的に評価する必要がある。
Key word
antimicrobial stewardship, antimicrobial resistance, surveillance
別刷請求先
*京都府京都市山科区御陵中内町5
受付日
2023年1月18日
受理日
2023年3月8日
日化療会誌 71 (3): 326-331, 2023