Vol.71 No.6 November 2023
原著・臨床
耐性腸内細菌目細菌に対するtazobactam/ceftolozaneのpharmacokinetics/pharmacodynamics解析
1)佐賀大学医学部附属病院感染制御部*
2)同 検査部
3)同 薬剤部
4)佐賀大学医学部国際医療学講座臨床感染症学分野
要旨
セファロスポリン系抗菌薬のceftolozaneとβ-ラクタマーゼ阻害薬であるtazobactamの配合剤であるtazobactam/ceftolozane(TAZ/CTLZ)は,多くのβ-ラクタマーゼ産生腸内細菌および多剤耐性緑膿菌に抗菌活性を有しているが,本邦の成人において耐性腸内細菌に対するpharmacokinetics/pharmacodynamics(PK/PD)の検討はされていない。本研究は基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase:ESBL)産生腸内細菌目細菌,AmpC β-lactamase産生腸内細菌目細菌,ESBLとAmpC β-lactamase両方を産生する腸内細菌目細菌およびカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem resistant Enterobacterales:CRE)に対して,モンテカルロシミュレーションによる5,000例のPK/PDシミュレーションを行った。PKパラメータは国内第III相試験から引用し,PDパラメータは佐賀大学医学部附属病院の臨床分離株から得たCTLZの感受性分布を使用した。CTLZの遊離型血中濃度が原因菌の最小発育阻止濃度を超える時間の割合が32.2%以上をPK/PDの目標値と定義し,目標達成確率(probability of target attainment:PTA)と累積応答率(cumulative fraction of response:CFR)を算出して90%以上を有効とした。TAZ/CTLZの投与計画は1.5 g(0.5/1.0 g)を1時間点滴で8時間ごととし,PKモデルは1-コンパートメントとした。結果は,MIC 2 μg/mL(CLSI M100-Ed33における感性のブレイクポイント)におけるPTAは98.9%,MIC 16 μg/mLでは84.9%であった。さらにESBL産生腸内細菌目細菌,AmpC β-lactamase産生腸内細菌目細菌,ESBLとAmpC β-lactamase両方を産生する腸内細菌目細菌,およびCREに対するCFRはすべて90%以上であった。PK/PDの観点からは,本邦の成人における耐性腸内細菌目細菌に対するTAZ/CTLZは感受性が判明していない経験的治療の段階から有用であると考えられる。
Key word
tazobactam/ceftolozane, pharmacokinetics/pharmacodynamics, extended-spectrum β-lactamase, AmpC β-lactamase, carbapenem-resistant Enterobacterales
別刷請求先
*佐賀県佐賀市鍋島5-1-1
受付日
2023年7月21日
受理日
2023年8月18日
日化療会誌 71 (6): 564-570, 2023