ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.72 No.3 May 2024

原著・臨床

抗菌薬が被疑薬であるKounis症候群に関する国内外医薬品副作用データベースを用いた調査

中蔵 伊知郎1), 坂倉 広大1), 天野 翔子1), 若林 智仁1), 坂本 麻衣1), 中野 一也1), 上野 智子1), 川端 一功1)

1)国立循環器病研究センター薬剤部

要旨

 Kounis症候群は,薬剤等により発生する「アレルギー反応に伴う急性冠症候群」として知られており,薬剤性のKounis症候群では,抗菌薬の関与も広く知られている。過去に医薬品副作用データベースを用いたKounis症候群の解析は行われているが,抗菌薬が関与するKounis症候群に関する内容は乏しい。今回,日本の医薬品副作用データベース(Japanese Adverse Drug Event Report database,JADER)および米国のFDA Adverse Event Reporting System(FAERS)のデータを用い,Kounis症候群発症のうち,抗菌薬が被疑薬となっているものについて調査を行ったため報告する。JADERデータおよびFAERSデータにおけるKounis症候群の報告症例のうち,抗菌薬が被疑薬であった延べ薬剤数はそれぞれ37件および775件であった。JADERでは,9種類の抗菌薬で報告があり,clarithromycinが12件と最も報告件数が多かった。FAERSでは33種類の抗菌薬で報告がされており,clavulanic acid/amoxicillinが133件と最も多かった。このうち,JADERでは8剤,FAERSでは29剤で安全性シグナルの検出を認めた。本報告では,過去の報告においてKounis症候群の報告されていない抗菌薬が被疑薬として確認できた。安全性シグナルの検出を認めた薬剤のうち,metronidazoleにおいては,添付文書の副作用の項目に,「ショック」,「アナフィラキシー」および「アレルギー反応に伴う急性冠症候群」は明記されていなかった。このため,ショック,アナフィラキシーの報告がない薬剤においてもKounis症候群が発症する可能性を想定しておく必要があると考えられた。

Key word

antimicrobial, adverse effect, Kounis syndrome

別刷請求先

大阪府吹田市岸部新町6番1号

受付日

2023年10月25日

受理日

2023年12月21日

日化療会誌 72 (3): 322-330, 2024