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書誌情報

Vol.72 No.3 May 2024

原著・臨床

小規模病院におけるAntibiotic Heterogeneity Index(AHI)を用いた抗菌薬適正使用評価の試み

中澤 りさ1), 山岸 由佳2)

1)高知県立あき総合病院薬剤科
2)高知大学医学部臨床感染症学講座

要旨

 薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)菌による感染症が世界的に問題となっており,AMR対策の一つである抗菌薬適正使用支援(antimicrobial stewardship:AS)活動が推進されている。AS活動の評価の指標としてantibiotic heterogeneity index(AHI)が有用である可能性が示されているが,小規模病院においてAHIを指標とした場合の対象菌種におけるアンチバイオグラムにもたらす影響は明らかではない。耐性菌の抑制を目標とするAS活動の効果を測定するための指標が確立されていないため,検討が必要である。当院では,抗緑膿菌薬4系統(ペニシリン系薬,セファロスポリン系薬,カルバペネム系薬,フルオロキノロン系薬)である5剤(tazobactam/piperacillin,ceftazidime,cefepime,meropenem,levofloxacin)について,2015年度上半期から2021年度下半期まで,6カ月ごとの4系統の抗菌薬使用密度(antimicrobial use density:AUD)における比率(%AUD)から算出したAHI(AHI・AUD)の目標値を0.85以上とし,各系統の%AUDの割合によって2017年より使用制限を行った。さらに入院患者から検出されたPseudomonas aeruginosaについて,2016年度上半期から2021年度下半期までの半期ごとの院内アンチバイオグラムを算出し,感性率が85%以下の抗菌薬は次のアンチバイオグラム判明までは使用制限を行った。それらの介入後に抗菌薬使用動向と院内アンチバイオグラムの関連性について検討した結果,AS活動の前後でAHI・AUD の平均値は0.63から0.77(p=0.046)と有意に上昇した。また,P. aeruginosaの4系統における感性率が81%以上であったAHIは,AHI・AUDの平均値が0.78であり,days of therapy(DOTs)における比率(%DOT)から算出したAHI(AHI・DOT)の平均値は0.80であった。以上の結果より,AHIを用いたAS活動により抗緑膿菌薬4系統における使用偏重は改善し,薬剤感受性を改善させることが期待でき,薬剤耐性菌の発現を抑制する可能性が示唆された。

Key word

antibiotic heterogeneity index, antimicrobial use density, days of therapy, antimicrobial stewardship, Pseudomonas aeruginosa

別刷請求先

高知県宿毛市山奈町芳奈3-1(現所属:高知県立幡多けんみん病院薬剤科)

受付日

2023年12月11日

受理日

2024年3月11日

日化療会誌 72 (3): 331-342, 2024