Vol.72 No.4 July 2024
症例報告
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン接種後に蜂巣炎様反応を発症した1例
1)東京品川病院呼吸器内科*
2)同 感染対策室
3)同 皮膚科
要旨
症例は75歳女性,気管支拡張症に対してエリスロマイシンによる少量長期維持療法のため通院中。23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)を2回目の定期接種として左上腕に皮下注射した。翌々日に発熱,悪寒,接種部位の発赤腫脹があり,ワクチンの副反応を心配し救急要請した。37.4℃の発熱と左上腕外側に手拳大の境界不明瞭な発赤・腫脹を認め,CTでは皮下脂肪織の混濁を呈していた。入院し蜂巣炎の疑いとしてセフトリアキソンの点滴静注と外用ステロイド剤を開始した。入院時陰性であったCRPは入院翌々日に7.72 mg/dLまで上昇し左上腕の腫脹も拡大したが以降は低下し,腫脹も一週間ほどで改善し退院した。退院一週間後の再診時に腫脹は消失していた。血液培養陰性と臨床経過から感染は否定的で,PPSV23接種による副反応として健康被害救済制度に申請し認定された。
PPSV23による蜂巣炎様反応の本態は接種した抗原によるIII型アレルギーで遅発性に生じ保存的に軽快しえる。本邦で300余例とまれな副反応であるが,感染性の蜂巣炎と所見は類似し,発生の予測は困難である。接種時の説明と発症時の適切な対応が重要となる。
Key word
adverse event, cellulitis, pneumococcal vaccine, vaccination
別刷請求先
*東京都品川区東大井6-3-22
受付日
2024年2月19日
受理日
2024年5月8日
日化療会誌 72 (4): 358-363, 2024