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書誌情報

Vol.72 No.6 November 2024

総説

Fosfomycin:多剤耐性菌への新たな対抗手段としての展望

平川 秀忠1), 富田 治芳1)

1)群馬大学大学院医学系研究科細菌学講座

要旨

 キノロン系薬やβ-ラクタム系薬をはじめとする医療の現場で中心的に使用されている抗菌薬に対する耐性菌が蔓延し,耐性率が高止まりを続けており社会的に大きな問題となっている。その中で,fosfomycin(FOM)の潜在的な需要が再び高まっている。その理由として,FOMは,その広い抗菌スペクトルに加え,キノロン系薬やβ-ラクタム系薬を含む他のカテゴリーの抗菌薬と交叉耐性を示さないため,多剤耐性菌に対する切り札として期待されていることが挙げられる。さらに本抗菌薬は,バイオフィルム内部やその周辺組織にみられるような微好気,および嫌気環境下においてより強い抗菌活性を示すという特長をもっている。
 FOMの抗菌活性は,不活化酵素の有無や標的分子であるMurA(細胞壁合成酵素)の変異に加えて,取り込み輸送体GlpTとUhpTの輸送活性と発現量に依存する。その中でGlpTとUhpTの発現量は,さまざまな環境因子や宿主,および細菌由来の代謝物質,制御系因子等によって変動することが,著者らを含む多くの研究グループによって明らかにされてきた。GlpTとUhpTの発現制御因子を含めたFOMの抗菌活性に影響を及ぼす因子とその分子メカニズムについて理解を深めることは,耐性菌の出現予測や本抗菌薬の有用性を高めるための治療プロトコルの改良に繋がることが期待される。
 本稿では,これまでに明らかにされてきた上記の知見について最新の研究の動向も含めた形で解説を行う。

Key word

FOM, drug resistance, biofilm, resistance gene, Escherichia coli

別刷請求先

群馬県前橋市昭和町3-39-22

受付日

2024年5月29日

受理日

2024年7月29日

日化療会誌 72 (6): 561-567, 2024