Vol.72 No.6 November 2024
原著・臨床
Tazobactam/piperacillinとvancomycinまたはteicoplanin併用療法における重症度を加味した急性腎障害発生率の多施設検討
1)日本医科大学武蔵小杉病院薬剤部*
2)同 感染制御部
3)関東労災病院薬剤部
4)同 総合内科
5)川崎市立川崎病院薬剤部
要旨
Tazobactam/piperacillin(TAZ/PIPC)とvancomycin(VCM)の併用療法は,急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の危険因子であることが報告されており,teicoplanin(TEIC)を代替薬として用いた併用療法はAKI発生率が有意に低いことが報告されている。しかし,重症度を加味した検討は実施されていないため,われわれはTAZ/PIPCとVCMの併用療法(以下,VCM群)と,TAZ/PIPCとTEICの併用療法(以下,TEIC群)の2群における重症度を加味したAKI発生率について比較した。3施設に入院した18歳以上の成人で併用療法を48時間以上行った患者(TEIC群80例,VCM群322例)を対象として除外基準に該当した症例を除き,傾向スコアマッチングにより患者背景が補正された各群48例を解析対象とした。AKI発生率は,TEIC群14.6%(7例/48例),VCM群35.4%(17例/48例)と,TEIC群で有意に低かった(p=0.03)。また,重症度の評価尺度としてSequential Organ Failure Assessment score(SOFAスコア)を用いて0~1,2~7,8~11,12以上の4段階に分類してカテゴリー別のAKI発生率を評価したところ,SOFAスコア0~1ではTEIC群6.2%(1例/16例),VCM群50.0%(8例/16例)と,TEIC群で有意に低かった(p=0.02)。SOFAスコア2以上については,いずれにおいても2群で有意差は認められなかった。TAZ/PIPCとの併用療法において,VCMと比較してTEICはAKI発生率が有意に低く,特にSOFAスコアが2未満の軽症例ではVCMよりTEICを選択することで,AKIの発生リスクを低減させ得る可能性が示唆された。
Key word
TAZ/PIPC, VCM, TEIC, acute kidney injury, severity of illness
別刷請求先
*神奈川県川崎市中原区小杉町1-383
受付日
2024年4月15日
受理日
2024年7月22日
日化療会誌 72 (6): 568-576, 2024