ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.73 No.S-1 April 2025

総説

カルバペネム耐性グラム陰性菌感染症患者を対象としたcefiderocolの第III相臨床試験(CREDIBLE-CR試験)

二木 芳人1), 栁原 克紀2), 三鴨 廣繁3), 土井 洋平4)

1)昭和大学医学部
2)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・診断学分野
3)愛知医科大学医学部臨床感染症学講座
4)藤田医科大学医学部微生物学講座・感染症科

要旨

 CREDIBLE-CR試験は,カルバペネム耐性グラム陰性菌感染症の患者を対象として,cefiderocol(CFDC)の有効性と安全性を評価することを目的とした,既存薬による最善の治療(Best Available Therapy:BAT)と比較した国際共同第III相試験である。日本人2例を含む152例が16カ国から登録され,このうちCFDCが1回以上投与されたカルバペネム耐性グラム陰性菌感染症150例(CFDC群101例,BAT群49例)が解析対象となった。疾患の内訳は,院内肺炎が67例(45%),血流感染症/敗血症が47例(31%),複雑性尿路感染症が36例(24%)であった。有効性の解析対象は,カルバペネム耐性グラム陰性菌が検出された118例(CFDC群80例,BAT群38例)とし,これらの主な菌種は,Acinetobacter baumannii(46%),Klebsiella pneumoniae(33%),Pseudomonas aeruginosa(19%)であった。
 院内肺炎と血流感染症/敗血症の有効性の主要評価項目である治癒判定(Test of Cure:TOC)時の臨床効果の有効率は,院内肺炎でCFDC群50.0%(20/40例)に対してBAT群52.6%(10/19例)であり,血流感染症/敗血症ではCFDC群43.5%(10/23例)に対してBAT群42.9%(6/14例)であった。また,複雑性尿路感染症の主要評価項目であるTOC時の細菌学的効果の菌消失率は,CFDC群52.9%(9/17例)に対してBAT群20.0%(1/5例)であった。
 安全性は治験薬を投与した全被験者を対象として解析し,副作用は,CFDC群で101例中15例(14.9%),BAT群で49例中11例(22.4%)に認められた。CFDC投与群で3例以上に発現した副作用は,ALT増加(3例),AST増加(3例)であった。重篤な副作用はCFDC群で1例(トランスアミナーゼ上昇1例),BAT群で5例(てんかん重積状態,アナフィラキシー反応,急性腎不全,敗血症性ショック各1例,代謝性アシドーシス,呼吸停止および急性腎不全1例)に認められた。副次評価項目の一つである試験終了時における全死因死亡率は,CFDC群で33.7%,BAT群で18.4%であり,CFDCで高い傾向が認められた。この原因として,CFDC群のAcinetobacter属感染症患者の全死因死亡率が高かった(CFDC群50.0%,BAT群17.6%)ことが影響した可能性があるものの,その原因は明確ではなく,偶発的な偏りである可能性は否定できなかった。
 事後解析を含めたCREDIBLE-CR試験の結果から,CFDCの有効性および安全性が確認された。カルバペネム耐性のグラム陰性菌感染症に対して,CFDCは有用な治療選択肢である。

Key word

cefiderocol, carbapenems, Gram-negative bacteria, drug-resistant bacteria

別刷請求先

東京都品川区旗の台1丁目5-8

受付日

2025年1月9日

受理日

2025年2月17日

日化療会誌 73 (S-1): 34-43, 2025