Vol.73 No.S-1 April 2025
総説
Cefiderocolのグラム陰性菌による複雑性尿路感染症患者を対象とした国際共同第II相試験および院内肺炎患者を対象とした国際共同第III相試験
1)井口腎泌尿器科・内科 新小岩*
2)札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座
3)国際医療福祉大学医学部感染症学講座
要旨
新規シデロフォア・セファロスポリン系抗菌薬であるcefiderocol(CFDC)は,幅広いグラム陰性菌への活性が確認されている。複雑性尿路感染症患者を対象とした国際共同第II相試験APEKS-cUTI試験では,CFDC群とimipenem/cilastatin(IPM/CS)群の治療終了7日後の臨床効果と細菌学的効果の複合エンドポイント達成率がそれぞれ72.6%と54.6%であり,調整済み群間差は18.6%(95%信頼区間:8.2~28.9%)であった。下限が非劣性マージンである-20%を上回り非劣性が検証され,さらに0を上回ったためIPM/CSに対するCFDCの優越性が示唆された。院内肺炎患者を対象とした国際共同第III相試験であるAPEKS-NP試験ではCFDC群と高用量長時間点滴meropenem(MEPM)群の14日目の全死亡率はそれぞれ12.4%と11.6%であり,調整済み群間差は0.8%(95%信頼区間:-6.6~8.2%)であった。下限が非劣性マージンである-12.5%を超えなかったことからCFDCのMEPM群に対する非劣性が検証された。忍容性も同等であった。両試験の事後解析ではCFDCがOXA-48型カルバペネマーゼ産生菌や,メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌に対しても有効であることが示唆された。また,CFDC治療は鉄の恒常性に影響を与えず,その有効性と安全性はベースラインの血中鉄レベルによって影響を受けないことが示されたため,実臨床下での処方は血中鉄濃度への特段の注意を必要としないと考えられる。両試験の結果から,CFDCがグラム陰性菌による複雑性尿路感染症患者,院内肺炎患者の治療の有力な選択肢となることが期待される。
Key word
cefiderocol, complicated urinary tract infection, nosocomial pneumonia, randomized controlled trial, post-hoc analysis
責任著者連絡先
*東京都葛飾区新小岩1-49-10 メディカルタウン新小岩5・6・7階
受付日
2024年12月26日
受理日
2025年2月3日
日化療会誌 73 (S-1): 44-53, 2025


