Vol.73 No.S-1 April 2025
総説
小児および特殊病態下の患者に対するcefiderocolの投与について―症例報告を中心とした検討―
1)千葉大学真菌医学研究センター感染症制御分野*
2)兵庫医科大学病院感染制御部
3)国立国際医療研究センター国際感染症センター総合感染症科
4)近畿大学病院安全管理センター感染対策部
要旨
細菌の能動的な鉄輸送システムを利用する新しい抗菌薬であるcefiderocol(CFDC)は,既存の抗菌薬に耐性を示すグラム陰性菌による感染症に効果を示すことが第II相および第III相試験で確認され,欧米および日本において承認されている。本総説では第II相および第III相試験で臨床効果が検討されていない部位の感染症や,小児および特殊病態下の患者に対するCFDCの使用実態について症例報告を中心に紹介する。
小児入院患者を対象としたPEDI-CEFI試験においてはCFDCの良好な忍容性が最近確認され,成人と同等の薬物血中濃度時間曲線下面積を達成するための用量として,体重34 kg未満の症例に対しては1回60 mg/kg,体重34 kg以上の症例に対しては1回2 gをいずれも8時間ごとに3時間かけて点滴投与することが妥当と考えられた。
特殊病態下の患者として,体外式膜型人工肺(ECMO)は抗菌薬の薬物動態に影響を与える可能性があるが,CFDCは回路への吸着などの影響がないことが報告され,承認された用法・用量を適応できると考えられた。一方で,持続血液濾過透析(CHDF)を行っている患者では,患者の残存腎機能および流量によりクリアランスが変動しCFDCの曝露量が低下することを考慮して用量を調整する必要がある。
中枢神経系感染症においては,CFDCの髄液中への移行が報告されており,その有効性が報告されている。眼感染症においては,硝子体に到達可能で十分な臨床効果を期待できる抗菌薬としてmeropenem以外の選択肢が必要とされているが,CFDCの硝子体への浸透性,点眼投与の可能性については十分なデータはない。皮膚軟部組織感染症に対しては,CFDCが皮膚および筋肉に十分な浸透性をもつことが報告されており,有用性が報告されている。免疫不全患者における多剤耐性菌による感染症に対して,CFDCにより奏効した事例が報告されている。しかし,CFDCを単独で使用すべきか,他の抗菌薬と併用すべきかについては結論が得られていない。
CFDCはカルバペネム耐性菌による各種感染症の適応を有しているが,検討中の小児試験や種々の症例報告から,CFDCの小児感染症への適応拡大が期待される。また,ECMOやCHDF施行患者などの特殊病態下の患者や,第II相および第III相試験で臨床効果が検討されていない中枢神経系,骨,皮膚軟部組織などの感染症においても,CFDCが治療選択肢となり得ることが示唆されている。
Key word
cefiderocol, Gram-negative bacteria, antimicrobial resistance, child dose, dialysis
責任著者連絡先
*千葉県千葉市中央区亥鼻1丁目8-1
受付日
2025年1月29日
受理日
2025年2月18日
日化療会誌 73 (S-1): 62-73, 2025


