Vol.73 No.3 May 2025
原著・臨床
歯科・口腔外科における抗菌薬適正使用支援チームの介入による経口第3世代セファロスポリン系薬の使用状況の変化
1)戸畑総合病院歯科・口腔外科*
2)同 内科
3)同 薬剤科
4)同 検査科
5)同 看護科
要旨
歯科における抗菌薬の処方割合は全診療科での抗菌薬処方の約10%を占める。歯性感染・予防では,amoxicillinを中心としたペニシリン系薬が第一選択薬として推奨されているが,歯科では経口第3世代セファロスポリン系薬の処方割合が多い。2016年,薬剤耐性対策アクションプランが発表され,経口セファロスポリン系薬の削減が掲げられたが,歯科における同薬剤処方の減少割合は十分ではない。抗菌薬適正使用を支援する取り組みとして,当院では2022年1月から抗菌薬適正使用支援チーム(AST)による活動を開始したが,歯科におけるAST活動の有用性に関する知見は少ない。本研究では,2021年9月から2024年2月の間に当院歯科・口腔外科を受診し,経口抗菌薬が処方された全患者2,996名(外来処方93.3%)を5つの期間(6カ月ごと)に分類し,AST活動が経口第3世代セファロスポリン系薬およびその他の経口抗菌薬の適正使用に与える影響について検討した。外来での経口第3世代セファロスポリン系薬の抗菌薬使用密度(AUD)は,AST介入後,0.64±0.19から0.13±0.75まで有意に減少した。また,目的別では,外来での感染予防に対する経口第3世代セファロスポリン系薬のAUDは同様に有意な減少を示したが,感染治療に対する経口第3世代セファロスポリン系薬のAUDは,AST介入1年後,0.26±0.10から0.13±0.08まで減少し,その後は横ばいで推移した。また,全抗菌薬処方に占める経口第3世代セファロスポリン系薬の処方割合は,全体(外来および入院)で61.0%から11.7%に減少し,経口ペニシリン系薬の処方割合は,全体で24.2%から64.3%に増加した。このように,薬剤師および歯科医師を中心としたAST活動は,歯科・口腔外科における抗菌薬適正使用に貢献したと考える。
Key word
antimicrobial resistance, antimicrobial stewardship team, antimicrobial use density, penicillins, oral third-generation cephalosporins
別刷請求先
*福岡県北九州市戸畑区福柳木一丁目3-33
受付日
2024年9月18日
受理日
2025年1月15日
日化療会誌 73 (3): 286-294, 2025