Vol.73 No.3 May 2025
原著・臨床
J-SIPHEの集計データを用いた多施設での外来抗菌薬使用状況の評価方法の検討
1)国立国際医療研究センター病院国際感染症センターAMR臨床リファレンスセンター*
2)岐阜大学医学部附属病院薬剤部
3)同 感染制御室
4)中村記念病院薬剤部
5)同 脳神経外科
6)市立函館病院薬剤部
7)同 小児科
8)北海道大学病院薬剤部
9)同 感染制御部
10)国立国際医療研究センター病院国際感染症センター
要旨
病院における抗菌薬使用量は外来での使用割合が多いが,外来抗菌薬の使用状況を多施設で評価する指標は明確なものがない。今回,外来抗菌薬の使用状況を評価する指標に関して,5施設データを用い施設間の比較検討を行った。2016年1月から2020年12月までの5年間,外来EF統合ファイルを用いて外来受診患者数,処方のある外来受診患者数,各抗菌薬の処方量,処方日数,処方患者数,処方件数を集計した。外来EF統合ファイルから集計した外来受診患者数は,病院報告で集計されている外来受診患者数との乖離率の中央値が3施設では2.03,8.50,13.89%であったが,1施設において24.31%の乖離率を認めた。また時間内診療の内服抗菌薬処方日数は4.83~19.30日であったが,時間外診療の内服抗菌薬処方日数は1.80~6.00日と短く,処方される系統にも違いを認めた。
外来抗菌薬の集計は,施設によって外来EF統合ファイルの対象外である歯科・自費等の受診や時間外処方等複数の要因が加わり入院よりも施設間の乖離状況が複雑化している。そのため各施設の外来EF統合ファイルの作成状況をふまえたうえとなるがデータソースや集計方法が統一化された感染対策連携共通プラットフォーム(Japan Surveillance for Infection Prevention and Healthcare Epidemiology:J-SIPHE)の登録データは,施設間の使用状況把握を行える可能性が示唆された。
Key word
J-SIPHE, outpatient, antimicrobial, surveillance
別刷請求先
*東京都新宿区戸山1-21-1
受付日
2024年11月18日
受理日
2025年2月4日
日化療会誌 73 (3): 295-302, 2025