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書誌情報

Vol.73 No.4 July 2025

原著・臨床

抗菌薬投与法の相違による下顎埋伏智歯抜歯術後経過の予備的検討

江副 祐史1), 野上 晋之介1), 冨塚 賢弥2), 山内 健介1)

1)東北大学大学院歯学研究科病態マネジメント歯学講座顎顔面口腔再建外科学分野
2)東北大学病院歯科顎口腔外科

要旨

 下顎埋伏智歯抜歯術は,surgical site infection(SSI)を生じる可能性がある,口腔外科領域で高頻度の手術である。今回われわれは,予防抗菌薬投与法の相違による術後経過について,前方視的な予備的検討を行ったのでその概要を報告する。
 2022年5月から2023年10月までに下顎埋伏智歯抜歯術のため当科を受診し,外来管理,かつ局所麻酔管理で抜歯術を計画した中で,研究同意を得た患者を対象とした。患者をランダムに2群に振り分け術前単回投与群(以下S群)と術後複数回投与群(M群)とした。性別,年齢,喫煙の有無,Pell-Gregory分類,Numerical Rating Scale(NRS),無痛開口量,抜歯創部の腫脹の有無,抜歯創部からの排膿の有無,SSI発生率を分析した。
 S群は30例(男性10例,女性20例),M群は28例(男性10例,女性18例)であった。平均年齢はS群が25.8(±5.5)歳,M群が25.9(±5.9)歳であった。喫煙者はS群が1例,M群が2例であった。Pell-Gregory分類による埋伏状態は両群ともClass IまたはII,Position AまたはBが多かった。平均NRSは術後1日で両群とも最大であったが経時的に減少し,両群間で有意な差は認めなかった。平均無痛開口量は術後減少も術後7日でほぼ開口障害は改善し,両群間で有意な差は認めなかった。抜歯創部の腫脹は術後7日までは経時的に改善しつつも認めたが術後14日でほぼ消失し,両群間で有意な差を認めなかった。SSI症例はS群では認めず(0%),M群で1例(3.5%)認めた。
 本研究により,SSIリスクの低い患者の下顎埋伏智歯抜歯術においては術前単回投与による予防抗菌薬で良好な術後経過を示す可能性が明らかとなった。

Key word

surgical site infection, tooth extracted wound, prophylactic administration, amoxicillin, antimicrobial resistance

別刷請求先

宮城県仙台市青葉区星陵町4-1

受付日

2024年6月25日

受理日

2025年3月24日

日化療会誌 73 (4): 322-328, 2025