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書誌情報

Vol.73 No.5 September 2025

原著・臨床

カルバペネム系抗菌薬の供給制限に伴う使用許可制導入が抗菌薬使用状況と緑膿菌の薬剤感受性率に及ぼす効果

坂本 凌1, 2), 西山 徳人1, 2), 田中 雅幸3), 杠 祐樹1), 宮下 修行1)

1)関西医科大学附属病院感染制御部
2)同 薬剤部
3)摂南大学薬学部

要旨

 カルバペネム系抗菌薬は広域な抗菌スペクトルを有し,重症感染症の経験的治療に広く使用されている。一方で,カルバペネム系抗菌薬の過剰な使用は薬剤耐性菌を増加させることから適正な使用が求められる。近年,抗菌薬供給制限が世界的な課題となっており,薬剤耐性菌に対する治療や抗菌薬適正使用支援(antimicrobial stewardship;AS)活動に深刻な影響を及ぼしている。中でも2022年9月から始まったmeropenemの供給制限に端を発するカルバペネム系抗菌薬の供給制限は,重症感染症に対する経験的治療や薬剤耐性菌に対する治療に重大な支障をもたらした。
 関西医科大学附属病院においてもカルバペネム系抗菌薬の供給が制限されたことから,2022年10月26日よりカルバペネム系抗菌薬を従来の届出制から使用許可制へ移行し,積極的にカルバペネムスペアリングの推奨を行うとともに,カルバペネム系抗菌薬使用許可段階での介入を行うことで,カルバペネム系抗菌薬の適正使用を推進した。本研究ではカルバペネム系抗菌薬の供給制限前(使用許可制導入前)と使用許可制導入後の各12カ月間の抗菌薬使用状況と緑膿菌の薬剤感受性率の変化を検討した。
 カルバペネム系抗菌薬使用許可制導入に伴い,カルバペネム系抗菌薬のdays of therapy(DOT)は約80%減少した。一方でカルバペネムスペアリングを推奨した結果,他系統の抗菌薬のDOTが増加したが,各抗菌薬の抗菌スペクトラムをスコア化し投与日数を乗じたdays of antibiotic spectrum coverage(DASC)に変化はなかった。さらにカルバペネム系抗菌薬を除く3系統の抗緑膿菌薬(ペニシリン系,セファロスポリン系,キノロン系)の緑膿菌感受性率は変化なく,カルバペネム系抗菌薬の感受性率は90%以上へ有意に改善した。これらの結果から,カルバペネム系抗菌薬の使用許可制はカルバペネム系抗菌薬使用前からの介入が可能であり,不必要なカルバペネム系抗菌薬の使用を制限することができ,結果的に緑膿菌の薬剤感受性率が改善したことから,薬剤耐性菌治療およびAS活動に有用である可能性が示唆された。

Key word

carbapenems, antimicrobial stewardship, days of therapy, days of antibiotic spectrum coverage, Pseudomonas aeruginosa

別刷請求先

大阪府枚方市新町2丁目3番1号

受付日

2025年2月18日

受理日

2025年6月16日

日化療会誌 73 (5): 378-385, 2025