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書誌情報

Vol.73 No.6 November 2025

原著・臨床

Gentamicinを用いた持続局所抗菌薬灌流において急性腎不全発症にかかわる血中薬物濃度のカットオフ値の検証

牧田 亮1), 林 高弘2), 大洞 舞奈1, 2), 前田(尾藤) 里奈1), 大野 裕之1), 井上 壽江1), 平下 智之1)

1)岐阜県総合医療センター薬剤部
2)金城学院大学薬学部

要旨

 術後の骨軟部組織感染制御を目的とした持続局所抗菌薬灌流(continuous local antibiotics perfusion:CLAP)が普及するようになった。抗菌薬にはgentamicin(GM)が頻用されるが,特に腎機能障害を未然に防ぐためにCLAP中は血中濃度モニタリングが必要とされる。しかしながら,CLAP時の血中GM濃度と腎機能障害について明らかな関連性を示した報告はない。そこで今回,CLAP時においてacute kidney injury(AKI)を発現し得る維持血中GM濃度(CLAP施行後の灌流量が安定した状態の値)の境界値の検証を行った。
 調査期間中にCLAPが施行された患者70名のうち,CLAP前からAKIと判断された症例などを除外した55名を解析対象とした。このうち5例でAKI発症を認め,維持血中GM濃度は2.5~3.3 μg/mLであった。AKI発症に影響する維持血中GM濃度の境界値の検証では,2 μg/mL未満群(<2群)のAKI発症率:0%と2 μg/mL以上群(≥2群):26.3%の間で差を認めた(P=0.003)。<2群と≥2群の患者背景を比較したが,年齢や腎機能では明らかな差を認めなかった。AKI発症5例のうち3例はCLAP終了後に血清クレアチニン値の改善を認めた。これにより,CLAP施行時でのAKI発現予防のためには,維持血中GM濃度を2 μg/mL未満とすることが妥当であることを明らかにした。
 以上より,GMを用いたCLAPを安全に実施するためには,維持血中GM濃度を2 μg/mL未満に設定すべきであることを提案する。

Key word

gentamicin, continuous local antibiotics perfusion, acute kidney injury, blood concentration

別刷請求先

愛知県名古屋市守山区大森二丁目1723番地

受付日

2025年2月12日

受理日

2025年6月26日

日化療会誌 73 (6): 572-579, 2025