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書誌情報

Vol.73 No.6 November 2025

原著・臨床

オリジナルゲームを活用した抗菌薬適正使用支援プログラムの実践とその教育効果の検証

金子 幸弘1, 2, 3), 山田 康一4, 5), 櫻井 紀宏5, 6), 岡田 恵代7), 明堂 由佳7), 藤田 明子7), 西浦 広将7), 中家 清隆5, 8), 野々瀬 由佳9), 高橋 佳苗10), 大倉 誠之輔10), 前田 雅子11), 前田 稔彦11), 掛屋 弘2, 3, 5, 7)

1)大阪公立大学大学院医学研究科細菌学
2)同 感染症科学研究センター
3)大阪公立大学大阪国際感染症研究センター
4)市立大村市民病院
5)大阪公立大学大学院医学研究科臨床感染制御学
6)大阪公立大学医学部附属病院薬剤部
7)同 感染制御部
8)同 中央臨床検査部
9)同 看護部
10)大阪公立大学大学院医学研究科医療統計学
11)まえだ耳鼻咽喉科クリニック

要旨

 薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)対策として,抗菌薬適正使用支援(antimicrobial stewardship:AS)の取り組みが国際的に推進されている。AS実施には,多職種の連携が不可欠であるが,ASに関する知識は微生物学,薬理学,感染症学など複数の領域にまたがり,職種間での理解度や経験にばらつきが生じやすい。その結果,個人や職種レベルでのナレッジギャップがASの推進における一つの障壁となっている。そこでわれわれは,ASに関するナレッジギャップ解消を目的として,オリジナルゲームを活用した研修プログラム「Fil-GAP(Facilitative Gathering for Appropriate Antimicrobial Practice)」を企画・実施し,その教育効果を検証した。研修会登録者にはASに関する知識テストおよび学習意欲などを評価するアンケートを実施した。登録者199名のうち,職種の回答があり,同意が得られ,研修会前後のデータが揃った81名を最大解析対象集団とした。また,主要評価項目(試験)は59名,副次評価項目(アンケート)は75名を解析対象とした。試験は23点満点で評価した。学習意欲や興味関心は専門性を共変量としたモデルで解析し,年齢が10歳上がるごとに,学習意欲のスコアが1段階以上改善する可能性が約1.7倍に高まることが示され,統計学的に有意であった。ゲーム教材に対するアンケートでも,「有用である」との評価が多く,肯定的な自由記述の意見が多く寄せられ,導入的・補助的な教育手段としての有用性が示唆された。本研究は,ASにおける教育的試みの1事例として,他施設や多職種の連携や教材活用の在り方を検討する際の一助となる可能性がある。

Key word

antimicrobial stewardship, infection control, antimicrobial resistance

別刷請求先

大阪府大阪市阿倍野区旭町1-4-3

受付日

2025年5月15日

受理日

2025年7月11日

日化療会誌 73 (6): 597-606, 2025