Vol.73 No.6 November 2025
症例報告
Cefepimeの週3回透析後投与での治療が有効かつ安全であった1例
1)がん・感染症センター都立駒込病院薬剤科*
2)同 感染制御科
3)同 大腸外科
4)川崎市立川崎病院感染症内科
5)東京都立大久保病院腎内科
6)東京科学大学大学院医歯学総合研究科感染症健康危機管理学分野
7)広島大学大学院医系科学研究科
要旨
症例は52歳男性,維持透析中であった。骨盤内膿瘍・仙骨骨髄炎を発症し入院した。血液・骨盤内膿瘍培養でEnterobacter cloacaeが検出され,cefepime(CFPM)1 g/日+metronidazole錠750 mg/日を開始した。治療期間は12週間を予定した。E. cloacaeの薬剤感受性試験結果では適切な内服抗菌薬の選択肢がなく,CFPMを継続する必要があった。入院11日目よりCFPMを週3回透析後投与(1.5 g/1.5 g/2 g)へ変更した。症状・炎症所見は改善を認め,入院29日目に退院し,外来で投与を継続した。退院7日目に骨盤内膿瘍・仙骨骨髄炎が再燃し入院した。血液・骨盤内膿瘍培養でKlebsiella pneumoniae等が検出されたが,E. cloacaeは検出されなかった。後日測定したCFPMの血中濃度は,9.2~37.1 μg/mLであり,入院中にCFPM関連神経毒性を疑う症状は認めなかった。CFPMの週3回透析後投与は有効血中濃度を維持でき,入院期間を短縮できる可能性がある。一方で,血中濃度上昇によるCFPM関連神経毒性には注意が必要である。
Key word
cefepime, hemodialysis, pharmacokinetics, serum concentration
別刷請求先
*東京都文京区本駒込3-18-22
受付日
2025年4月21日
受理日
2025年7月1日
日化療会誌 73 (6): 607-613, 2025


