Vol.73 No.6 November 2025

短報

岡山赤十字病院において分離されたカルバペネム耐性グラム陰性桿菌に対するcefiderocol薬剤感受性の検討

宮本　拓実^1）, 香川　麻衣^1）, 河内　加奈子^1）, 大山　智之^1）, 小田　昌弘^1）, 花房　伸幸^2）, 小池　彩子^2）, 細川　忍^3）, 奥　格^4）, 森　英樹^2）, 別所　昭宏^3）

^1）岡山赤十字病院検査部^＊
2）同　薬剤部
^3）同　呼吸器内科
^4）同　麻酔科

要旨

　Cefiderocol（CFDC）は，カルバペネム耐性腸内細菌目細菌（carbapenem-resistant Enterobacterales）を含む多剤耐性グラム陰性桿菌に対し幅広い抗菌活性を示すβ-ラクタム系新規抗菌薬である。
　本検討では，2011年から2025年の間に当院で分離されたカルバペネム耐性グラム陰性桿菌を対象にCFDCの薬剤感受性試験を実施し，その感受性率を求めることを目的とした。
　対象菌株のうち，カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌［carbapenemase-producing Enterobacterales］56株，カルバペネマーゼ非産生腸内細菌目細菌［non-carbapenemase-producing Enterobacterales］ 5株，カルバペネム系抗菌薬に耐性を示すPseudomonas aeruginosa 19株，カルバペネム系抗菌薬に耐性を示すStenotrophomonas maltophilia 10株に対するCFDCの感受性率はいずれも100％であったが，NDM-遺伝子陽性のカルバペネム耐性Acinetobacter baumannii 1株はCFDCに耐性を示した。
　本検討においてCFDCはカルバペネム耐性グラム陰性桿菌に対して良好な感受性結果を示した。このことから，多剤耐性菌に対する治療戦略を考えるうえで，CFDCがひとつの有効な選択肢となる可能性が示唆された。

Key word

cefiderocol, carbapenem-resistant Enterobacterales, Pseudomonas aeruginosa, Stenotrophomonas maltophilia, Acinetobacter baumannii

別刷請求先

^＊岡山県岡山市北区青江2丁目1-1

受付日

2025年4月22日

受理日

2025年7月28日

日化療会誌 73 (6): 614-620, 2025