Vol.74 No.1 January 2026
総説
発熱性好中球減少症時の抗菌薬適正使用
1)国立がん研究センター東病院感染症科*
2)国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科
要旨
発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)は定義上,発熱原因を特定しない概念である。その原因として感染症以外の発熱性疾患も含まれるが,好中球減少が高度かつ長期化するほど重症感染症リスクは増大する。FNでは緑膿菌菌血症などの致死的感染症に迅速対応するため,発熱時点で広域抗菌薬を経験的に開始することが推奨される。推奨薬には第4世代セファロスポリン系抗菌薬(cefepime),tazobactam/piperacillin,カルバペネム系抗菌薬があり,感染部位やESBL産生菌の関与のリスクなどにより選択を工夫する必要がある。抗菌薬の選択は施設ごとのアンチバイオグラムをふまえ,多剤耐性グラム陰性桿菌関与リスクが高い場合にはアミノグリコシド系抗菌薬の併用も考慮される。一方,過度な広域抗菌薬使用や嫌気性菌カバーは腸内細菌叢の乱れや耐性菌リスク増加に関与することが報告されており,慎重な適応が求められる。さらに,好中球減少下での抗菌薬に関しては,臨床経過が安定し耐性菌関与の証拠がない場合,治療失敗や死亡を増加させずに狭域化したり投与期間を短縮できる可能性が複数の研究で示されている。ただし,抗菌薬の狭域化/終了後も粘膜障害に関連した菌血症リスクの増加など注意すべき点も存在する。現時点では症例の重症度や多剤耐性菌の感染リスクを総合的に判断しつつ,適正な抗菌薬開始と早期適正化の両立を目指すことが重要である。
Key word
febrile neutropenia, empiric therapy, de-escalation, antimicrobial stewardship
別刷請求先
*千葉県柏市柏の葉6-5-1
受付日
2025年8月28日
受理日
2025年10月15日
日化療会誌 74 (1): 1-8, 2026


