Vol.74 No.1 January 2026
原著・基礎
PK/PD理論に基づくStreptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae,Haemophilus influenzaeに対するlascufloxacinのmutant selection windowの検討
1)和歌山県立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科*
2)杏林製薬臨床開発センターメディカルアフェアーズ
要旨
上気道感染症の主要な原因微生物であるStreptococcus pyogenes,Streptococcus pneumoniaeおよびHaemophilus influenzaeの薬剤耐性菌は,Bacterial Priority Pathogens Listに緊急対策を要する優先病原菌として挙げられている。さらに,本邦においてもレスピラトリーキノロンに対して耐性あるいは低感受性を示す菌株の出現が報告されている。このような薬剤耐性菌の増加に対して,pharmacokinetics/pharmacodynamics(PK/PD)理論に基づく抗菌薬の適正使用が推奨されている。そこで,本研究では,急性咽頭・扁桃炎,急性鼻副鼻腔炎および急性中耳炎患者から分離されたS. pyogenes,S. pneumoniaeおよびH. influenzaeの臨床分離株各30株を用いてlascufloxacin(LSFX)の最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)および変異阻止濃度(mutant prevention concentration:MPC)を測定した。また,菌種別に変異株選択域(mutant selection window:MSW)を求め,既報のLSFXの上気道組織内濃度との関係を考察した。
LSFXのS. pyogenesに対するMIC90は0.06 μg/mL,MPC90は0.12 μg/mLであった。S. pneumoniaeに対するMIC90は急性鼻副鼻腔炎患者由来の臨床分離株と急性中耳炎患者由来の臨床分離株のいずれも0.12 μg/mLであり,MPC90も同様に0.25 μg/mLであった。H. influenzaeに対するMIC90およびMPC90は急性鼻副鼻腔炎患者由来の臨床分離株と急性中耳炎患者由来の臨床分離株のいずれにおいても0.06 μg/mLであった。LSFXをヒトに常用量投与した時の口蓋扁桃組織濃度は1.30 μg/g,副鼻腔粘膜濃度は1.32 μg/g,中耳粘膜濃度は0.87 μg/gと報告されており,いずれの組織内濃度も上記原因菌に対するMPCの3倍以上に達していることが明らかとなった。このことから,上気道組織においてLSFXが耐性菌を選択する可能性は低いと考えられた。
Key word
lascufloxacin, mutant selection window, pharmacokinetics/pharmacodynamics, antibiotic resistance, upper respiratory tract infection
別刷請求先
*和歌山県和歌山市紀三井寺811-1
受付日
2025年7月30日
受理日
2025年11月6日
日化療会誌 74 (1): 9-15, 2026


