Vol.74 No.1 January 2026
原著・臨床
造血器腫瘍の発熱性好中球減少症における2次治療を要する患者背景因子の検討
1)天使病院薬剤部*
2)同 血液内科
3)同 外科
要旨
発熱性好中球減少症(FN)は,造血器腫瘍に対する化学療法において頻繁に発生する合併症で,重篤な感染症や治療成績の悪化を招くリスクがある。本邦のガイドラインでは,抗緑膿菌作用を有するβ-ラクタム系抗菌薬の初期単剤療法が推奨されているが,2次治療の最適戦略は明確でない。本研究では,初期治療としてcefepime(CFPM)単剤療法を受けた造血器腫瘍のFN患者を対象に,2次治療を要した症例の臨床的特徴と関連因子を検討した。2015年1月から2022年12月の期間で天使病院に入院し,化学療法後にFNを発症した造血器腫瘍患者のうち,初期治療としてCFPM単剤療法を受けた69例を解析した。CFPM単剤で治療完遂した患者を1次治療群(pt群,30例),他の抗菌薬治療を要した患者を2次治療群(st群,39例)とし,患者背景と治療効果を比較した。治療成功率は,pt群26/30例(86.7%),st群17/39例(43.6%)であり,st群はpt群と比較して治療開始時のC-reactive protein(CRP)値が有意に高値であった〔7.6 mg/dL vs. 2.3 mg/dL(中央値,p=0.0026)〕。Receiver operating characteristic解析では2次治療が必要となるCRPカットオフ値は6.43 mg/dLと算出された。ロジスティック回帰分析の結果,「治療開始時のCRP値」と「過去3カ月以内のFN治療歴」は2次治療の必要性と有意に関連していた(p=0.0059,p=0.0047)。本研究の結果,造血器腫瘍におけるFN治療において,「治療開始時のCRP値が6.43 mg/dL以上」および「過去3カ月以内のFN治療歴」は,1次治療としてのCFPM単剤療法の奏効率低下に関与するリスク因子である可能性が示唆された。これらの背景を有する患者では注意深く治療経過をモニタリングしながら,必要に応じてCFPMからの広域化,抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌薬や抗真菌薬の併用を検討すべきである。
Key word
febrile neutropenia, hematological malignancy, second-line treatment, risk factor
別刷請求先
*北海道札幌市東区北12条東3丁目1-1
受付日
2025年3月28日
受理日
2025年10月6日
日化療会誌 74 (1): 25-33, 2026


