Vol.74 No.2 March 2026
原著・臨床
白内障手術クリニカルパスにおける抗菌薬適正使用支援活動―経口levofloxacin削除が術後眼内炎発症に及ぼす影響―
1)九州大学病院薬剤部*
2)同 グローバル感染症センター
3)同 検査部
4)九州大学大学院医学研究院眼科学
5)九州大学病院総合診療科
要旨
近年,薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)が世界的な問題となっており,抗菌薬の使用量削減が求められている。AMR対策において,より効果的な抗微生物薬適正使用支援(antimicrobial stewardship:AS)活動の推進には,施設単位でのASプログラム評価指標であるプロセス指標やアウトカム指標の評価が重要となる。AS活動の標準的な介入の方策に術後感染予防抗菌薬の適正化が挙げられており,クリニカルパスの見直しが抗菌薬使用の適正化につながるとされる。九州大学病院(以下,当院)では,白内障手術を受ける患者に対し安全かつ標準化された周術期管理を行うために水晶体再建術クリニカルパス(以下,パス)を適用している。このパスでは,従来より周術期の抗菌薬として経口levofloxacin(LVFX)が使用されてきた。今回,当院眼科とグローバル感染症センターが協働してパスの見直しを行い,使用薬剤からLVFXを削除した。その結果,AS介入前後1年間における白内障手術後の眼内炎の発症件数はともに0件であり,LVFX削除に伴う術後眼内炎の増加は示されなかった。また,AS介入後でLVFXの抗菌薬使用密度(antimicrobial use density),投与日数(days of therapy)および処方患者数はいずれも有意な減少を認めた(すべてp<0.0001)。これに伴い,当院眼科のLVFXの使用量はAS介入前後で8,896錠から324錠に減少し,薬価として317,164円の削減を達成した。以上より,パス見直しによるLVFX削除後も術後の眼内炎発症を認めず,LVFX使用量の削減につながったことから,本研究は本邦のAMR対策に大きく貢献できる可能性が示唆された。
Key word
antimicrobial stewardship, clinical pathway, levofloxacin, postoperative endophthalmitis, surgical site infection
別刷請求先
*福岡県福岡市東区馬出3-1-1
受付日
2025年8月8日
受理日
2025年10月28日
日化療会誌 74 (2): 135-141, 2026


