Vol.74 No.2 March 2026
原著・臨床
集中治療室患者における血清(1→3)-β-D-glucan高値と侵襲性真菌感染および死亡率との関連性の検討
1)福岡大学薬学部腫瘍・感染症薬学研究室*
2)福岡大学病院医学部救命救急医学講座
要旨
(1→3)-β-D-glucan(BDG)は侵襲性真菌感染症(invasive fungal infections:IFI)診断の補助指標であり,血清BDG高値のIFI患者では死亡率の上昇が報告されている。しかし,BDG高値が示す病態や予後に関する研究は限定的である。本研究では,血清BDG高値が集中治療室(intensive care unit:ICU)患者のIFIおよび死亡率に及ぼす影響を検討するため,後方視的コホート研究を実施した。
2016年1月~2024年6月に福岡大学病院ICUに入室し,β-グルカンテスト®で陽性を示した患者を対象とした。血清BDGが11以上55 pg/mL未満の群(group<5x)207名と55 pg/mL以上の群(group≥5x)59名に分類し,傾向スコアによりマッチングした。各群の30日死亡率,IFI発生率および生存期間を比較し,死亡リスク因子を解析した。
マッチング前後の30日死亡率は,group<5xとgroup≥5xにおいて,20.8% vs. 23.7%および29.5% vs. 25.0%であり,差はなかった。IFIの確定診断例+臨床診断例は,マッチング前では2.4% vs. 17.0%,マッチング後には2.3% vs. 15.9%であり,いずれもgroup≥5xで有意に高率であった。Kaplan-Meier法による生存分析では,両群間に差は認められなかった(p=0.93)。30日死亡率に対する多変量Cox回帰分析では,Acute Physiologic Assessment and Chronic Health Evaluation IIスコア,Pitt菌血症スコア,腎代替療法が独立したリスク因子であり,血清BDGは有意な因子ではなかった。
ICU患者の血清BDG陽性は偽陽性が多く,高値でも死亡率に差はなかった。しかし,血清BDG高値を呈する症例ではIFIの発生率が有意に高いため,積極的なIFI精査と迅速な抗真菌薬投与が生命予後の改善につながる可能性がある。
Key word
(1→3)-β-D-glucan, intensive care unit, invasive fungal infection
別刷請求先
*福岡県福岡市城南区七隈8丁目19番1号
受付日
2025年7月25日
受理日
2025年11月18日
日化療会誌 74 (2): 142-152, 2026


