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書誌情報

Vol.74 No.2 March 2026

原著・臨床

急性期病院における薬剤師主導の抗菌薬適正使用支援活動がStaphylococcus aureus菌血症治療に及ぼす効果の検討:単一施設における感染症専門医によるCase-Based Learning導入前後の探索的検討

大塩 崇次1), 宮﨑 美子1), 下舘 桃子1), 佐村 優2), 鈴木 正論2), 濃沼 政美2), 藤田 裕晃3)

1)戸田中央総合病院薬剤科
2)帝京平成大学薬学部
3)東京医科大学病院感染症科

要旨

 黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)は死亡率が高く,適切なケアバンドル遵守が求められる。抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)は薬剤師の関与が効果的だが,日本では感染症を専門とする医療従事者の教育体制や配置が十分ではない。戸田中央総合病院は常勤感染症専門医不在の急性期病院で,2022年4月から非常勤感染症専門医による週1回のCase-Based Learning(CBL)を開始した。またCBLを契機に,薬剤師によるSAB支援内容において抗菌薬選択の明確化と診断的アプローチの強化が必要と考えASPを見直した。CBL導入前後で,薬剤師主導のASPがSAB治療に与える影響と抗菌薬適正使用支援チーム(AST)専任薬剤師の活動に与える影響を後方視的に検証した。
 2020年4月から2024年3月における入院成人SAB患者をCBL導入前(pre-CBL)とCBL導入後(post-CBL)の2群に分け,SABに関するプロセス指標はケアバンドル全平均実施率を,アウトカム指標は30日死亡率等を,CBLがAST専任薬剤師の活動に与える影響については主治医とAST専任薬剤師の想定感染巣の相違の有無等を調査した。
 ケアバンドル全平均実施率は有意に上昇し(39.2±5.1% vs. 60.8±5.1% p<0.01),30日死亡率に有意差を認めなかった[5/34(14.7%)vs. 8/34(23.5%)p=0.54]。主治医とAST専任薬剤師の想定感染巣の相違はpost-CBL 9例,全期間12例であった。感染症専門医とAST専任薬剤師の想定感染巣はすべて一致し,そのうち化膿性血栓性静脈炎2例の感染症診断に薬剤師が寄与した。全期間で相違のあった12例のうち6例で適正抗菌薬が使用されていなかった。
 CBL導入後の薬剤師主導のSABに対するASPではケアバンドルの実施率が有意に上昇し,ASPの継続的な再評価の必要性と感染症にかかわる薬剤師に対するCBLの有用性が示唆された。

Key word

antimicrobial stewardship, Staphylococcus aureus bacteremia, pharmacist, human resource, full-time equivalent

別刷請求先

埼玉県戸田市本町1丁目19-3

受付日

2025年7月7日

受理日

2025年11月21日

日化療会誌 74 (2): 153-162, 2026