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書誌情報

Vol.74 No.2 March 2026

原著・臨床

肺膿瘍・膿胸の従来抗菌薬治療とlascufloxacinへの変更治療の後方視的比較

橋本 章司1), 馬越 泰生2), 前田 恭兵2), 髙田 創2), 上山 廉起3), 谷口 聖治3), 田村 香菜子2), 森下 裕2)

1)大阪はびきの医療センター臨床研究センター
2)同 呼吸器内科
3)同 呼吸器外科

要旨

 背景:肺膿瘍・膿胸では外科的処置の併用下でも広域抗菌薬の長期投与を要する症例が多い。当院では肺組織移行性と抗嫌気性菌活性に優れ,抗緑膿菌活性を示さないlascufloxacin(LSFX)を導入し,導入後16カ月間の肺膿瘍・膿胸の入院症例を対象に治療内容と臨床経過を調査・検討した。
 対象と方法:2022年3月~2023年6月に当院に入院した肺膿瘍・膿胸の全73例から他の全身感染症の合併や基礎疾患での死亡・転出の10例を除外した63例を対象とした。外科的処置のない肺膿瘍/内科的膿胸35例と外科的膿胸28例に分類し,おのおのを狭域薬群,広域薬群と,4日間以上の先行抗菌薬でCRP/症状が改善せずにLSFXに変更されたLSFX変更群の3治療薬群に分類した。3治療薬群における治癒(CRP・呼吸器症状の陰性化と治療終了7日後の安定)率と抗菌薬総投与日数を,全例と,肺膿瘍/内科的膿胸例・外科的膿胸例に分けて比較した。次に3治療薬群における,血清Alb値の最低値からの上昇と,治療開始/変更時の検出菌を検討した。さらに抗菌薬総投与日数と関連する因子を全例対象の多変量解析で検討した。
 結果:肺膿瘍/内科的膿胸35例と外科的膿胸28例の全例が治癒していた。また平均総投与日数(LSFX変更群,狭域薬群,広域薬群)は,肺膿瘍・内科的膿胸では(22.1±5.6日,36.5±12.2日,55.2±23.6日,p<0.001),外科的膿胸では(30.5±7.5日,39.1±10.6日,44.0±11.2日,p<0.05)であった。血清Alb値の回復率は全体で93.2%(55/59),LSFX変更群で93.8%(15/16)であった。治療開始/変更時の喀痰で緑膿菌/extended spectrum β-lactamase産生菌がおのおの8例/2例(計15.9%)で検出され,3治療薬群で検出率に差がなかった(p=0.66)。また総投与日数の延長と関連する因子は,3治療薬群分け(LSFX変更,狭域薬,広域薬,p<0.001)と治療開始時の血清Alb低値(p<0.05)であった。有害事象は全例で認めなかった。
 考察:肺膿瘍・膿胸の入院症例の検討で,LSFX変更群の抗菌薬総投与日数が短い可能性が示唆された。

Key word

lung abscess, empyema, lascufloxacin, surgical treatment

別刷請求先

大阪府羽曳野市はびきの3-7-1

受付日

2025年4月11日

受理日

2025年12月9日

日化療会誌 74 (2): 170-178, 2026