Vol.74 No.2 March 2026
症例報告
Gordonia hongkongensisによる敗血症性塞栓症を発症したオーバーラップ症候群の1例
1)佐賀大学医学部附属病院感染制御部*
2)同 膠原病・リウマチ内科
3)同 検査部
4)なゆたの森病院
要旨
Gordonia属は環境中に存在するグラム陽性桿菌であり,カテーテル関連血流感染症の稀な原因菌として知られている。今回,Gordonia hongkongensisによる血流感染症と敗血症性塞栓症を発症した全身性強皮症ならびに全身性エリテマトーデスのオーバーラップ症候群の症例を報告する。患者は,全身性強皮症による消化管蠕動運動障害のため3年前より末梢挿入型中心静脈カテーテル(peripherally inserted central venous catheter:PICC)を留置し,在宅で長期中心静脈栄養中の46歳女性である。急性発症の発熱を契機に入院となり,血液培養2セットからグラム陽性桿菌が検出された。検出菌は,matrix assisted laser desorption-ionization mass spectrometry(MALDI-TOF MS)および16S rRNA遺伝子解析の結果,G. hongkongensisと同定された。PICCの抜去ならびにmeropenemの開始,その後ceftriaxoneへの変更を行ったが,第18病日に死亡の転帰となった。Gordonia属はグラム染色の形態上,Nocardia属やCorynebacterium属と誤認されやすく,従来の生化学的検査を用いた同定はしばしば困難である。これらの菌を区別することは,薬剤感受性試験結果の予測ならびに初期治療を選択するうえで重要であり,分子生物学的手法を用いた迅速かつ正確な診断が求められる。抗菌薬適正使用支援のためには適切な微生物の推定・同定,診断支援が欠かせないという教訓的な症例である。
Key word
Gordonia hongkongensis, systemic lupus erythematosus, bacteremia, septic embolism
別刷請求先
*佐賀県佐賀市鍋島5-1-1
受付日
2025年7月15日
受理日
2025年10月30日
日化療会誌 74 (2): 179-186, 2026


