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書誌情報

Vol.74 No.3 May 2026

原著・臨床

診療報酬請求データの質の確保における事務職員の役割:抗菌薬適正使用の認知と感染症病名入力補助業務の実態

下平 智秀1, 2, 3), 町田 征己2, 4), 中村 造2), 桑田 浩3), 原 俊太郎3), 渡邉 秀裕2), 竹内 裕紀1)

1)東京医科大学病院薬剤部
2)同 感染制御部
3)昭和医科大学大学院薬学研究科衛生薬学分野
4)東京医科大学公衆衛生学分野

要旨

 薬剤耐性(AMR)は世界的な公衆衛生上の脅威である。日本では,感染対策向上加算に伴う行政報告や各種サーベイランスにおいて診療報酬請求データが活用されており,データの質の確保が求められている。しかし,データ作成に関与する事務職員が,これらの業務の意義をどの程度認識しているかは明らかでなかった。
 単一大学病院の事務職員322名を対象にWebアンケート調査を実施した。調査項目は,背景因子(所属部署,勤務年数),抗菌薬適正使用(AMS)関連の認知度(抗菌薬適正使用支援チーム[AST],質の指標),および感染症病名入力補助業務時の診療録確認頻度とした。
 回答率は39.8%(128名)であった。ASTおよび質の指標に関する認知度は,診療報酬請求業務の職員(n=42)においてさえ42.9%・33.3%,その他の部署の職員(n=86)では23.3%・22.1%と低かった。勤務年数別の比較では,診療報酬請求業務の職員内において,ASTおよび質の指標に関する認知度は,いずれも勤務年数10年以上の職員で10年未満の職員に比べ有意に高かった(AST認知度:83.3% vs 26.7%,p=0.003;質の指標に関する認知度:66.7% vs 20.0%,p=0.009)。一方,その他の部署では勤務年数による有意差は認めなかった。さらに,診療報酬請求業務の職員のうち,感染症病名の入力補助業務を担う職員(n=32)において,感染症病名の入力補助業務の際に常に診療録を確認する割合が10年以上の職員で有意に高かった(90.9% vs 40.0%,p=0.029)。
 事務職員,特に若手職員におけるAMSへの理解不足が示唆された。正確な医療データに基づくAMR対策を推進するためには,事務職員を医療チームの重要な一員と位置づけ,その役割に基づいた継続的な教育的介入を設計・実践していくことが重要であると考えられる。

Key word

antimicrobial resistance, antimicrobial stewardship, questionnaire survey, surveillance, administrative claims data

別刷請求先

東京都新宿区西新宿6-7-1

受付日

2025年10月10日

受理日

2026年1月19日

日化療会誌 74 (3): 421-427, 2026