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書誌情報

Vol.74 No.3 May 2026

原著・臨床

抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022に基づく腎機能別vancomycin初期投与設計ノモグラムの臨床評価

竹内 陽亮1), 小松原 靖二郎1), 竹内 祐葵1), 高木 明子1), 長島 裕樹1)

1)吹田徳洲会病院薬剤部

要旨

 抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022(以下,GL 2022)において,vancomycin(VCM)の治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)は,血中濃度-時間曲線下面積(area under the concentration-time curve:AUC)400~600 μg·h/mLを目標とすることが推奨されている。また,GL 2022では,体重および腎機能に基づくVCM初期投与設計ノモグラム(以下,ノモグラム2022)も併せて提示された。
 本研究では,ノモグラム2022に改編を加えたノモグラムを作成し,吹田徳洲会病院において当該ノモグラムに従ったVCM投与が実施された144例を対象に,初回TDM時のパラメータを用い,TDMソフトウェアPATにより定常状態におけるAUCを算出した。目標とされるAUC 400~600 μg·h/mL達成は91例(63.2%),非達成は53例であった。ロジスティック回帰分析の結果,AUCが400 μg·h/mLを下回る有意なリスク因子として,「皮膚軟部組織感染症」および「推算クレアチニンクリアランス値(creatinine clearance:Ccr)50~59 mL/min,VCM 0.5 g 12時間ごと投与」が抽出され,AUC 600 μg·h/mLを上回る有意なリスク因子としては,「Ccr 70~79 mL/min,VCM 1.0 g 12時間ごと投与」のみが抽出された。AUC 600 μg·h/mLを上回るリスク因子については,ノモグラム2022のCcr表記を「70」は「70~79」,「80」は「80~89」と解釈することでリスク回避が可能であり,その他のCcrについても同様の解釈が有用であると考えられた。これらの結果より,特に安全性の観点から,ノモグラム2022は幅広い患者背景に対応可能な,汎用性の高い投与設計ツールであることが示唆された。

Key word

vancomycin, therapeutic drug monitoring, area under the concentration-time curve

別刷請求先

大阪府吹田市千里丘西21番1号

受付日

2025年6月27日

受理日

2026年1月22日

日化療会誌 74 (3): 428-437, 2026