Vol.74 No.3 May 2026
症例報告
高速液体クロマトグラフィーによる迅速血中濃度測定が診断に寄与した壊死性軟部組織感染症症例におけるacetaminophen薬剤性肝障害の1例
1)岡山大学病院薬剤部*
2)同 感染制御部
3)同 感染症内科
要旨
既往歴に特記すべき事項のない女性(73歳・体重44 kg)。鼠径部壊死性軟部組織感染症に対しデブリードマンおよび抗菌薬治療を施行した。第2病日からacetaminophen(AAP)点滴4,000 mg/日で疼痛管理を開始したところ,第4病日より急激な肝酵素上昇を認めた。画像検査による肝臓および胆道の器質的異常は認めず,急性ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎は血清学的に否定された。また,循環動態が安定していたためショック肝も疑われず,AAPによる薬剤性肝障害が最も疑われた。第7病日にAAP血中濃度を院内の高速液体クロマトグラフィー(high-performance liquid chromatography[HPLC]:株式会社日立ハイテクアナリシス)で測定したところ,第4病日の検体(投与約4時間後)で50.53 μg/mLと健常人データ(5~10 μg/mL)を大きく上回り,AAPによる薬剤性肝障害と判断した。通常,AAP血中濃度測定は外注に依存し結果判明に数日を要するが,本症例では院内HPLCにより即時に結果を得られ,診断と疼痛管理方針変更に寄与した。AAP中止後,肝酵素は改善し第25病日に正常化した。本症例は,院内HPLCによる迅速測定が診断と治療最適化に直接貢献する可能性を示した。
Key word
acetaminophen, hepatotoxicity, therapeutic drug monitoring, high-performance liquid chromatography, antimicrobial stewardship
別刷請求先
*岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
受付日
2025年9月22日
受理日
2025年12月22日
日化療会誌 74 (3): 438-443, 2026


