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書誌情報

Vol.52 No.6 June 2004

原著・臨床

ペニシリン系またはセフェム系抗菌薬が無効であった呼吸器感染症に対する注射用ciprofloxacinとカルバペネム系薬の臨床成績の比較

河野 茂1), 柳原 克紀1), 朝野 和典2), 飴嶋 慎吾3), 出村 芳樹3), 石崎 武志4), 山口 佳寿博5), 渡邊 秀生5), 塚田 弘樹6), 鈴木 榮一7), 下条 文武6)

1)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染分子病態学(病態生理制御学分野)
2)大阪大学大学院医学系研究科感染制御部, 3)福井大学医学部第3内科
4)福井大学医学部看護学科基礎看護学, 5)慶應義塾大学医学部内科学
6)新潟大学大学院医歯学総合研究科臨床感染制御学分野
7)新潟大学医歯学総合病院医科総合診療部

要旨

 背景:注射用ニューキノロン系薬(ciprofloxacin,CPFX)が本邦でも臨床使用が可能となり,感染症治療の新しい選択肢として注目されている。しかしながら,本薬の臨床的位置づけは明確にされていない。
 目的:呼吸器感染症におけるCPFXの臨床的位置づけを明確にすることを目的とした。
 対象および方法:ペニシリン系またはセフェム系薬にて効果不十分の肺炎および慢性呼吸器感染症の急性増悪例を対象とし,封筒法にて無作為にCPFX 300 mg, 1日2回点滴静注群と,カルバペネム系薬0.3~0.5 g,1日2回点滴静注群に分け有効性,安全性,治療期間,抗菌化学療法日数を比較した。
 結果:試験期間中,83例が登録され,そのうち基準を満たす78例を安全性評価対象,68例を有効性評価対象とした。両群の年齢,性別,感染症診断名,重症度,前治療抗菌薬など背景因子はいずれも同等であった。有効率はCPFX群82.7%(24/29例),カルバペネム群71.0%(22/31例)と両群同等であったものの,1週間以内に試験薬の投与が終了できた早期改善例はCPFX群のほうが高い傾向がみられた(p<0.05)。なお,入院日数および化学療法日数は両群間に有意差は認められなかった。因果関係を否定しえない有害事象はCPFX群13.5%(5/37例),カルバペネム群12.2%(5/41例)であり,いずれも重篤なものはみられなかった。
 考察:ペニシリン系またはセフェム系薬にて十分な効果が得られない呼吸器感染症に対して,CPFXは少なくともカルバペネム系薬と同等以上の臨床効果が得られ,早期改善効果が高かった。この結果からβ-ラクタム系薬無効のCPFXは呼吸器感染症治療の新しい選択肢として期待されることが示唆された。

Key word

pneumonia, respiratory tract infection, intravenous new quinolone, carbapenem, randomized controlled trial

別刷請求先

長崎県長崎市坂本1-7-1

受付日

平成16年4月7日

受理日

平成16年4月30日

日化療会誌 52 (6): 309-317, 2004