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書誌情報

Vol.52 No.8 August 2004

原著・基礎

小児急性気道感染症より分離されたA群溶血レンサ球菌の薬剤感受性とT型別

砂押 克彦1,3), 中山 栄一2,3), 小林 玲子3), 鈴木 悦子3), 田島 剛2), 生方 公子3)

1)埼玉県衛生研究所臨床微生物担当
2)博慈会記念総合病院小児科
3)北里大学北里生命科学研究所感染情報学研究室

要旨

 2002年4月から2004年3月までの間に,小児のA群溶血レンサ球菌性咽頭・扁桃炎例から分離された総計533株のA群レンサ球菌を対象とした。これらの菌株に対するβ-ラクタム系薬8薬剤,macrolide(ML)系薬4薬剤,clindamycinおよびtelithromycinの計14薬剤の感受性を測定した。β-ラクタム系薬のMIC90はcefditoren=cefdinir=cefcapene(0.008 μg/mL),cefpodoxime(0.016 μg/mL),ampicillin=amoxicillin=faropenem(0.031 μg/mL),cefaclor(0.125 μg/mL)の順で優れていた。本菌に対するML系薬のMIC90は,β―ラクタム系薬に較べて明らかに劣っていた。TelithromycinのMIC90は,0.031 μg/mLであった。これらの菌に対し,ML耐性遺伝子のermBmefA,およびermTRの有無をPCRにて検索した。17株(3.2%)がermB遺伝子保持株,26株(4.9%)がmefA遺伝子保持株,3株(0.5%)がermTR遺伝子保持株であった。ermB保持株はすべてのML系薬に高度耐性,mefA保持株はjosamycin,clindamycinを除いた薬剤に1 μg/mL以上のMICを示した。ermTR保持株に対する各薬剤の抗菌力はmefA保持株に近かった。
 T型別では,12型(32.3%)が最も多く,次いでT4型,T1型,T13型,T25型等であった。ML耐性菌は多くの型に認められたが,その中のmefA保持株はその半数以上が増加傾向にあるT25型であった。優位に分離されるT型が変化しつつあると考えられ,今後とも継続的なサーベイランスが必要と結論された。

Key word

Streptococcus pyogenes, antibiotic susceptibility, T type, macrolide-resistance gene, pharyngotonsillitis

別刷請求先

埼玉県さいたま市桜区上大久保639-1

受付日

平成16年5月31日

受理日

平成16年7月6日

日化療会誌 52 (8): 401-407, 2004