Vol.52 No.8 August 2004
原著・臨床
急性成人歯性感染症患者を対象としたcefcapene pivoxilの臨床的検討
東海大学医学部外科学系口腔外科*
要旨
経口抗菌薬の対象となる成人の歯科・口腔外科領域感染症に対するcefcapene pivoxil(CFPN-PI)の有用性を探索する目的で臨床的検討を行った。
全国の一次医療機関(開業歯科医院)3施設,二次医療機関9施設の計12施設において,歯周組織炎84例,歯冠周囲炎10例,顎炎52例の計146例にCFPN-PIが投与された。
(1)主治医判定による有効率は疾患別では歯周組織炎84例で有効率90.5%,歯冠周囲炎10例で有効率80.0%,顎炎52例で有効率94.2%,全体146例では有効率91.1%であった。一次医療機関と二次医療機関で有効率を比較してみると87.7%と93.3%とほぼ同様であった。
(2)年齢別有効率は青年層で84.8%,壮年層で92.1%,高齢層で97.3%であった。投与量別有効率は300 mg/日の139例で91.4%,450 mg/日の7例で85.7%であった。
(3)「歯科口腔外科領域における抗菌薬効果判定基準」による3日目判定では,歯周組織炎59例では有効率91.5%,歯冠周囲炎7例では有効率85.7%,顎炎38例では有効率92.1%,全体104例では有効率91.3%であった。
(4)新薬シンポジウム時との有効率の比較では,主治医判定で89.8%と91.1%,3日目判定で91.2%と91.3%と同等の成績であった。
副作用は153例中2例(1.4%)に軽度の副作用が認められた。
以上の成績より,CFPN-PIは歯科・口腔外科領域感染症に対し300 mg/日の常用量投与で,開発時と同様の優れた治療効果と安全性を示したことから,現時点でも本領域の治療に有用な薬剤であると検証された。
Key word
oral infection, cefcapene pivoxil, postmarketing clinical study
別刷請求先
*神奈川県伊勢原市望星台
受付日
平成16年5月21日
受理日
平成16年6月17日
日化療会誌 52 (8): 416-425, 2004