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書誌情報

Vol.52 No.8 August 2004

原著・臨床

A群溶血レンサ球菌性咽頭炎・扁桃炎例に対する経口抗菌薬投与後の除菌率の比較

中山 栄一1,3), 砂押 克彦2,3), 鈴木 悦子3), 小林 玲子3), 百村 芽衣1), 舟木 尚美1), 飯塚 雄俊1), 近藤 康夫4), 田島 剛1), 生方 公子3)

1)博慈会記念総合病院小児科
2)埼玉県衛生研究所臨床微生物担当
3)北里大学北里生命科学研究所感染情報学研究室
4)こんどうこどもクリニック

要旨

 2001年2月~2003年7月までの間に,博慈会記念総合病院小児科外来を受診し,臨床症状からA群溶血レンサ球菌による咽頭炎・扁桃炎が疑われ,迅速抗原検査によってA群溶血レンサ球菌が陽性と判定された622名を対象とした。これらの症例に対し,amoxicillin(AMPC),cefaclor(CCL),cefditoren pivoxil(CDTR-PI),cefcapene-pivoxil(CFPN-PI),clarithromycin(CAM),およびazithromycin(AZM)のいずれかを曜日ごとに薬剤を変える投与方法により除菌率の比較を行った。投与期間終了後,その時点から7日目に再び細菌検査を行い,除菌の有無を確認した。
 除菌率はCDTR-PIの投与例で(149/158例:94.3%)と最も優れ,次いでAMPC(98/110例:89.1%),CFPN-PI(111/128例:86.7%),CAM(63/75例:84.0%),CCL(65/80例:81.3%),そしてAZM(54/71例:76.1%)の順であった。各薬剤間における除菌率には有意差が認められた。CDTR-PIとAMPCとの間には有意差を認めなかったが,CCL,CFPN-PI,およびCAMとの間には危険率5%以下で有意差を認め,さらにAZMとの間には危険率1%以下で明らかな有意差を認めた。特にCAMあるいはAZM投与例において,マクロライド耐性遺伝子保持株が起炎菌であった11例は全例で除菌されていなかった。
 以上の成績から,A群溶血レンサ球菌感染症の治療に際し,マクロライド系薬よりもβ―ラクタム系薬のほうがより適切であることが示唆された。

Key word

Streptococcus pyogenes, pharyngotonsillitis, macrolide-resistant gene, eradication rate, oral antibiotics

別刷請求先

東京都足立区鹿浜5-11-1

受付日

平成16年5月18日

受理日

平成16年7月13日

日化療会誌 52 (8): 426-432, 2004