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書誌情報

Vol.53 No.1 January 2005

原著・臨床

肺炎球菌性市中肺炎に対するtosufloxacin tosilate治療効果

河野 茂1), 柳原 克紀1), 斎藤 厚2), 健山 正男2), 松島 敏春3), 二木 芳人4), 渡辺 彰5), 朝野 和典6), 青木 信樹7), 新谷 博元8), 西 耕一9), 佐野 靖之10), 鈴木 直仁10), 杉浦 宏詩11), 酒井 茂利12), 飯塚 和弘13), 井田 隆14), 早川 啓史15), 橋爪 一光16), 立花 昭生17), 有田 健一18), 沖本 二郎19), 石田 直20), 河原 伸21), 多田 敦彦22), 谷向 健23), 渡邊 正俊24), 米山 浩英25), 松本 行雄26), 澤江 義郎27), 福田 正明28), 橋口 浩二28), 川村 純生29), 崎戸 修30), 井上 祐一31), 泉川 欣一32), 福島 喜代康33), 徳永 勝正34), 福田 安嗣35), 前田 篤志36), 金城 俊一37), 普天間 光彦37), 大城 元38), 伊良部 勇栄39), 東 正人40), 大山 泰一41), 久手堅 憲史42)

1)長崎大学医学部第二内科, 2)琉球大学医学部第一内科
3)淳風会倉敷第一病院呼吸器センター, 4)川崎医科大学呼吸器内科
5)東北大学加齢医学研究所呼吸器腫瘍研究分野, 6)大阪大学医学部感染制御部
7)新潟市社会事業協会信楽園病院内科, 8)小松市民病院内科
9)石川県立中央病院呼吸器内科, 10)同愛記念病院財団同愛記念病院アレルギー呼吸器科
11)康和会久我山病院呼吸器内科, 12)明晴会西部入間病院内科
13)飯塚病院, 14)東京医療生活協同組合中野総合病院内科
15)国立病院機構天竜病院内科, 16)県西部浜松医療センター呼吸器科
17)立花クリニック, 18)広島赤十字・原爆病院呼吸器科
19)川崎医科大学附属川崎病院呼吸器内科, 20)倉敷中央病院呼吸器内科
21)河原内科医院, 22)国立病院機構南岡山医療センター内科
23)健奉会谷向内科, 24)井上内科医院
25)清和会笠岡第一病院内科, 26)労働者健康福祉機構山陰労災病院感染症内科
27)国家公務員共済組合連合会新小倉病院内科, 28)日本赤十字社長崎原爆病院呼吸器科
29)江迎町立北松浦医師会運営北松中央病院内科, 30)大村市立病院内科
31)健康保険諫早総合病院内科, 32)栄和会泉川病院内科
33)長崎県立成人病センター多良見病院内科, 34)植木町国民健康保険植木病院内科
35)尾崎内科医院, 36)前田内科医院
37)かりゆし会ハートライフ病院呼吸器科, 38)信和会沖縄第一病院内科
39)楽生会コザ病院内科, 40)北部地区医師会病院内科
41)禄寿会小禄病院内科, 42)琉球生命済生会琉生病院呼吸器内科

要旨

 日本呼吸器学会の「呼吸器感染症に関するガイドライン―成人市中肺炎診療の基本的考え方―」(以下,「市中肺炎ガイドライン」)において,肺炎球菌検出時の推奨薬剤のひとつとして,tosufloxacin tosilate(TFLX)やsparfloxacin(SPFX)等のフルオロキノロン薬がある。しかし,その臨床的検討はほとんどなされていない。そこで,今回,市中肺炎ガイドライン等を参考に,肺炎球菌性肺炎に対するフルオロキノロン薬TFLXの有効性について検討した。
 肺炎患者のうち塗抹染色で肺炎球菌が疑われた症例(以下,塗抹染色陽性例)とその中でStreptococcus pneumoniaeが検出された症例(以下,肺炎球菌検出例)を対象とした。塗抹染色陽性例68例と肺炎球菌検出例36例の患者背景に差は認められなかった。臨床効果は塗抹染色陽性例で1日量450 mg投薬(以下,450 mg群)が92.6%(25/27)の有効率を示し,600 mg投薬(以下,600群)が35例全例有効であった。無効の2例は市中肺炎ガイドラインにおける中等症であった。肺炎球菌検出例では450 mg群が93.6%(15/16),600 mg群が16例全例有効であった。S. pneumoniaeの消失率は450 mg群が94.1%(16/17),600 mg群が93.8%(15/16)であった。今回分離されたS. pneumoniaeに対するTFLXのMIC90は0.25 μg/mLであり,健康成人の血中濃度から求めた1日AUCをもとに算出したAUC/MIC ratio(AUIC)は450 mg投与が46.4,600 mg投与が62.0であった。
 TFLXは肺炎球菌性肺炎に対し,臨床的検討,抗菌力および体内動態の基礎的な面から有効性が認められ,抗肺炎球菌活性の強いレスピラトリーキノロンであることが確認された。
 TFLXを肺炎球菌性肺炎に使用する際は,軽症から中等症を対象とし1日450 mgまたは600 mgを投薬する。また,中等症でも臨床症状や各種検査所見から炎症反応が強い場合には,高用量の600 mg投薬が望ましいと考えられた。ただし,最近,キノロン耐性肺炎球菌の増加が報告されており,安易な使用は避けるべきである。

Key word

tosufloxacin tosilate, TFLX, Streptococcus pneumoniae, community-acquired pneumonia, post marketing surveillance

別刷請求先

長崎県長崎市坂本町1-7-1

受付日

平成16年10月12日

受理日

平成17年1月5日

日化療会誌 53 (1): 11-19, 2005